恋愛短編集
少しお休み中 猫部な茶都 うなべ
A 目をのぞき込まれたら
I'm going to study English.
さらさらとペンを走らせ、英語のノートを埋めていく。あと1単語となった時。
「とこちゃん。こっち見て」
ちょっとだけ声の主の方を見ると、綺麗な顔が私のすぐそばまで来ていた。
私は驚いて逃げようとしたが、にやっと笑った彼の手に阻まれ頬にキスをされる。
「はぁ...葛。そう簡単にキスしないでくれ」
いつも通りにプンスカプンスカ文句を言うが、全くもって通じていない。彼の顔は優しく笑ったままだ。
「いやぁ、やっぱり可愛い」
「いや、可愛くないだろ。それよりも私は今のお前の姿を学校中に見せてやりたいぞ。」
隣に居る勝手にキスした彼は、
私が言うのはあれだが、普段の彼は2軍男子ぐらいの雰囲気を纏っている。たがしかし、目にかかるくらいの少し長めの髪をボサボサにしているからそう見えるだけであって、分けて髪を整えると綺麗な目をのぞかせる。
「葛モテるよ。全校の女子に」
「やだ。とこちゃんだけに好かれていたらいい。」
こんな所で言わないでくれ、恥ずかしいから。そう言いたかったのに言葉が出ない。
そんな自分を紛らわすために私は宿題を再開する。
ここは、私の従姉妹がやっている喫茶店。私達が通っている高校生も来るため、結構な生徒が私達カップルのことを知っている。
ちょっと前にその事について文句を言ったら
『だって、俺がとこの彼氏だって広めたいもん。』
と、独占欲強いどころじゃないほどの言葉が帰ってきた。
従姉妹に見られてるんだよ。こちとら恥ずかしいんだよ。
そんな事を考えていたら、高校生が入ってきた。私達の通っている高校の制服だ。しかも...
「おっリア充発見。いいねラブラブだ」
先生から生徒まで、学校中の恋愛を網羅している同級生
「リア充じゃないよ。」
絶対九重は充実してるが、私は充実して...いるのか?いないのか?少し何か違和感がある。
いつものように甘えたりからかったりする九重に、レコードのかかる店内。いつもと違うのは初音がいることだけ。
「足りないのかな...」
「どした、なぁに?」
彼の綺麗な目が私の奥底にある感情まで覗き込まれてしまいそうで、私は慌てて目を逸らす。
だけど間に合わなかったようだ。
「あっ、可愛いなぁ。ねぇねぇ今週の土日どこか空いてる?」
いつもの得意顔で私を優しく包み込むように微笑む。彼に抱きつきたいと思ってしまった。これほどまで私は彼にほだされてしまったようだ。
「いいね。絵になるよ」
外野がボソッ呟いたが、私たちの耳には届いていなかった。
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