4章 瞬殺推理『ワンターンキル』(2)

【防衛成功! おめでとう! 六点の獲得です!】


 俺のデスタブに、そんな通知が入った。

 手持ちの点数が十七点となる。

 俺は気絶させたプレイヤー九番からデスタブを奪う。

 九番は俺の殺人に失敗したため減点、点数が残り六点となっていた。

 マーダーノットミステリーのルール的には、0点になるか死なない限り首輪は爆発しない。

 俺は九番に手錠をかけて拘束する。

 そんな時、俺の制服の上着を着た中学生が駆け寄ってきた。


 ……要するに東京駅にて九番の尾行に気付いた俺は、付近にいたこの中学生に囮を頼んでいた。俺の上着を着て目立つ場所を歩くだけの簡単なバイトである。


 上着を返してもらい、バイト代で五千円を渡すと中学生は喜びながら去ってく。

 隣の心音は唖然としていた。


「……何なんですか今の? 殺人事件で襲われる前に犯人を倒す、探偵が先制攻撃するのってアリなんですかね……?」


 俺は応じる。


「もちろんアリだろ。事件を推理で解決すると言っても種類があってだな。今のは探偵クラスタで言うところの、瞬殺推理ワンターンキルって言う探偵スキルだ」

「……探偵スキルって何です?」

「探偵スキルは要するに、特殊技みたいなもんだよ。瞬殺推理は文字通り、事件が発生する前に犯人を推理して倒してしまう技だな。別に俺の専売特許ではなく、俺も他の奴がやっているのを真似てアレンジしてるだけだ。まぁそんな感じで、一重に推理するって言っても、色々と手法があるんだよ」

「……ちなみに他にはどんな推理方法があるんですか?」

「有名なところで安楽椅子探偵、遠くから情報のみで事件を解決してしまう遠隔推理リモートワークとか、後はそれらしい嘘をでっち上げて事件を解決したことにしてしまう空想推理ストーリーテラーなんて技もある」

「……嘘をでっち上げるとかって、探偵として良いんですか?」

「いいんだよ。依頼人とか被害者が満足する結末なら。……まぁ個人的には、やっぱり瞬殺推理が被害者も全く出さずに事件を解決してしまう手法だから、これがお勧めだ」

「……いや、お勧めされても普通の人間こんなの出来ないと思うんですけど。貴方なんなんです?」

「だから俺は至極普通の天才名探偵だっつーの。ちなみにツイッターはフォロワー十万を超えてるアルファツイッタラーだ」

「……その最後の情報いります?」


 確かに最後のはただの自慢だ。

 まぁ得意げに話したが、瞬殺推理は杏の情報収集能力があってこその技だった。俺一人ではできない。

 俺が直感や推理で事件や謎を解決できる才能を持っているのと同じように、杏は情報システムや機器のバグやパスワードを直感や推理で当てられるというチートとしか言いようのないスキルを持っている。


 杏にハッキングできないシステム、情報機器はこの世界にあんまり無い。

 ぶっちゃけ、このマーダーノットミステリーとかいうクソゲーも、俺と杏なら楽勝だと思う。


 俺がデスタブで加点された持ち点を確認していると、デスゲームSNSは殺人予告だけではなく、他のSNSと同様に普通の日記の様な投稿も出来ることに気付いた。

 折角なので俺は、倒した九番の写真を取り、


『まずは一人。うぇ~い、デスゲーム運営みてる~?』


 というコメントと共に写真をデスゲームSNSに投稿した。

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