2章 マーダーノットミステリー(1)
金に釣られて大手企業の脱出ゲームに参加したら、デスゲームだった件について。
俺の今の状況は、そんな感じだった。
……全く笑えねえよクソが!
普段、動画を二倍速で見ている俺にとって、心音の説明は非常に遅くストレスだった。
即座に配布されたタブレット端末を起動、俺はルールに目を通す。
・賞金総額100億円!
デスゲーム、マーダーノットミステリーの説明。
【概要】
SNS上で殺人を予告して殺人事件を起こし、プレイヤー同士で殺し合うバトルロイヤル形式のデスゲーム。
【ルール】
ゲームには配布した弊社デスゲーム専用タブレット端末(以下、デスタブ)を使用。
デスタブには弊社デスゲームSNSが入っており、アカウント名になっている番号、およびデスタブ背面の数字がそれぞれのプレイヤー番号となる。
デスゲームSNS上で、他プレイヤーのアカウントに『殺人予告』を行い、殺人行為を仕掛ける。殺人の方法は自由。手持ちの点数は一点からスタートで、予告から三十分以内に殺人を成功させると十点加点。失敗すると五点減点される。また殺人予告を受けたプレイヤーが防衛に成功した場合、六点加点する。
五十五点以上の獲得でゲームクリアとなり、ゲームから解放、賞金十億円獲得となる。
死亡、あるいは点数が〇点になった場合、ゲームオーバーとして首輪の爆弾が爆発、抹消となる。
場所は東京都周辺、期間は一週間。
参加人数は六十人で、ゲームクリアのプレイヤーが五人でた時点でゲームは終了となり、クリアできなかった全てのプレイヤーはゲームオーバーとなり首輪は爆発する。
なおゲーム期間、一週間を経過してもゲームクリアとなったプレイヤーが五人出ない場合は、手持ち点数の上位五名をゲームクリアとする。その中に同点の同着があった場合、同着のプレイヤーを含めてゲームクリアとする。
手持ち点数は、一点を支払い現金百万円と換金が可能。資金使途は自由。換金はデスタブに入っている銀行アプリにて、都内のコンビニにあるATMで行える。
またプレイヤーの他にデスゲーム運営の司会役三人がゲームに参加。司会はルール違反を認めた場合、プレイヤーを処刑できる権限を持つ。
司会はゲームの円滑な進行と娯楽性を確保するため、独自の特殊ルールを設けてイベント戦をSNS上で予告、プレイヤーを指定して、プレイヤー同士を強制的に戦わせることが出来る。
ゲームを公正に保つため、プレイヤー及び司会、デスゲーム運営はルールを遵守する。ゲーム開始後は、ゲーム終了まで運営はプレイヤーに干渉できないものとする。また不足の事態でルール変更の必要がある場合は、出資者および観客の過半数の同意を得て行うものとする。
※その他の質問について、デスタブより担当のデスゲーム司会に電話でお気軽にご質問下さい。
……ルールを読んで、俺は卒倒しそうになる。
なんだこの倫理の欠片もないクソゲーは。
名探偵の俺を舐めてんのか?
しかもデスタブってなんだよ。可愛く略せばいいって話じゃねーぞ。
面白いじゃねえか。
こんなクソゲー、俺が全力でぶっ壊してやる!
デスゲームの説明を終えた心音が、スマホを取り出す。
「ルールは実際にやってもらうのが一番解りやすいと思いますので、早速始めたいと思います。皆さんのスタートはこの輸送機です。まずは私が司会の権限で、イベント戦を開催しますので」
心音が黒服に目で合図する。
黒服は鉄製の扉の向こう側から、何かを運び入れはじめた。
迷彩色のリュックの様なものだ。次々と投げ込み全部で十個が積まれる。
……あれはパラシュートか? まさか飛び下りろって言うんじゃねえだろうな……。
俺が内心でそう呟いた直後、心音は宣言する。
「では皆様。全員、ここから飛び降りて下さい。無事に地上へ生還できたらクリアです。制限時間は三十分。三十分超えてここに残っていた人間は全員、射殺します。パラシュートは十本用意しました。残念ながら人数分はないのでご自由に奪い合ってどうぞ。パラシュートは落下中に自動で開くやつなので操作は安心して下さいね」
心音が軽い調子で言い終えると同時に、俺を含めたプレイヤー全員のデスタブが鳴る。
俺のデスタブの画面にも、通知が来ていた。
【司会、姫野心音よりイベント戦の予告がされました! 頑張って生き延びて下さい!】
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