第71話 橋本一巴殿からの形見わけ?ですか?

ども、坊丸です。

教育係というか師範役という感じで甲斐から虎哉禅師が政秀寺にやってきました。

まぁ、信濃や美濃で修行というかいろいろぶらぶらしてから尾張に来たみたいです。


って、自由人かよ!禅の修行をしてるストイックな修行僧じゃないのかよ!とか思っても、口にも出さないくらいには大人の対応ができますよ。微妙に顔には出てしまうかもしれませんが。


「さて、柴田殿、坊丸殿、中村殿、まずは橋本一巴殿の墓にご案内いたそう」


って、寺男の人にお墓に案内されて、軽く手を合わせるくらいだと思ったら、沢彦禅師、虎哉禅師、それと沢彦禅師の侍僧の宗尋さんまで一緒にっていうか、案内してくれてるし!


なんとなく、橋本一巴さんのご供養しておきたいな&織田の鉄砲に関して遺志を継ぎますよ!って墓前に誓っておこうかな‥って軽めの気持ちで墓参りしたいって言ったのに、高僧二人を含む僧侶三人ががりの超真面目な供養するヤツになってますよ!マジっすか!?


で、平手政秀さんのやや豪華な墓の斜め後ろに橋本一巴さんのお墓は、ありました。

真新しい御影石の墓石とやっと墨が乾いたばかりの卒塔婆、最近手向けられた抹香が真っ白な灰になったものとわずかに萎れたか萎れていないかといった仏花。


この墓前で最近仏事があったことを明確に表す品々。それを見たとき、やっと橋本一巴さんにはもう二度と会えないし、話を聞いたり、教えを受けることはないのだなぁ‥と、実感できました。いや、できてしまいました。


現世では、子供の頃、ひいばぁちゃんの葬儀に立ち会いましたし、仕事の関係でお見送りにも立ち会いましたが、もっともっと関わり合いたいと思いはじめた人が突然いなくなるというのは、実は初めての経験だと気がつき、「胸が締め付けられる」とは、この事なのか‥と実感がじわじわと迫って来ました。


そんな想いで、墓前に立つと、沢彦禅師に以下二名が墓石の前に立ち、読経を始めてくれます。

平成令和のような酷暑ではなく、夏と言っても、自分の記憶に比較すると涼しい感じですが、読経とツクツクボウシの鳴き声が木霊するそんな中、三名の僧侶の声を聞きながら、ただひたすらに墓前に手をあわせます。


なかなかの時間、読経を聞いた感じがしますが、般若心経ぽいの以外は残念ながら知りませんでした。

宗尋さんから抹香を一つまみもらい、柴田の親父殿の後、作法とかわからなかったので柴田の親父殿の動きを丸パクリして香をあげ、手を合わせます。

作法は丸パクリですが、橋本一巴さんを悼む気持ちは自分だけのかたちで心を込めて祈りました。


その後、沢彦禅師の方丈に戻ったところで水分補給を所望。ぬるま湯での粉茶をいただきました。ぷはぁ~、汗の分だけ生き返る。


「さて、各々がた、橋本殿のご供養、ありがたく存じます。沢彦漬け等を食べておくつろぎください。それと、宗尋、橋本殿の奥方から預かった物をこちらに持ってきてもらえるか?」


「はっ、では、しばしお待ちください」


「沢彦禅師、この漬け物は、禅師の名がついていると言うことは、禅師のご考案で?」


「はっはっは、儂はこのような物を考えつくことはできないな。これは、そちらの坊丸殿が考え付いたのだかな、尾張に広めるために、拙僧の名前を貸せと言われてな」


「沢彦禅師、自分は禅師に名前を貸せなんて失礼なことは言っておりませんよ!沢彦禅師の名前をいただいて、こそ、この漬け物は広まると、そう考えたわけでして‥」


「ほらな、虎哉、これこそ、坊丸の真骨頂よ」


「大丈夫です、沢彦禅師、だいたいわかりました。坊丸殿の教育、気を引き締めて取り組む所存」


「皆様、お待たせいたしました。橋本一巴殿の奥方様から坊丸殿へと預かった品と書状でございます」


そう言うと、30センチほどの包みと書状を自分の前に宗尋さんが置きました。


「開けてよろしいでしょうか?」


一応、周りの人々に確認をとります。


「坊丸殿へ、と預かったものだ。坊丸殿のみこころのままにするがよかろう」


「では、失礼して」


包みを開けると、そこには火縄銃なのにピストルくらいの短さの銃が!

って、なんだこれ!


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