第313話
「「痛いです」」
「ならやめろよ……」
人型に進化したときには、かなりの美女となっていたはずのクロコとタケコ。
しかし、名前を争って話し合った結果、ラブ&ピースは破綻して戦争へと発展した。
戦闘方法は、互いの頬を叩きあう根性勝負みたいなもの。
ヤンキーかプロレスラーみたいな方法で雌雄を決し、髪が黒いほうがクロコ、髪が緑のほうがタケコになったようだ。
まあ、どっちもほっぺたが腫れ上がってハムスターか何かみたいになっているけども。
「なあ2人共、その体になってすぐで悪いけど、逃げれるか戦えるかどうか確認したいんだ。どんな事ができるか教えてもらえるか?」
「「良いでしょう」」
どのくらい走れるかとか、攻撃できるなら何ができるかとか、そういうことを確認しておかないと流石に危ない。
そう思って聞いてみたんだけれど。
「「「え?」」」
てっきり、髪色以外見た目に差異がないように見える2人だから、攻撃方法なんかも全部いっしょなのかと思っていたんだけれど、戦闘態勢になった2人は、それぞれ違う武器を取り出し装備した。
クロコは、黒いムチを持ち、パシィと地を叩く。
タケコは、手に亀の甲羅のような手甲をつけ、風を置き去りにするシャドーボクシングを見せた。
だけど、互いにそれは予想外だったのか、2人とも互いが同じ装備を出すと思っていたらしく、呆けた顔になっている。
「なぜムチなど持っているのです?貴方は亀だった誇りを捨てるのですか?」
「亀の細長い首の攻撃力を知らないのですか?知らないのですね馬鹿だから」
「はいストップ」
ラブアンドピースがまた破綻しそうだったので、とりあえず止めておく。
この少しの間の動きだけで、かなりの身体能力が有るのは確認できたので、まあ連れて行っても俺達が護りきりって事はないだろう。
「おやおや、同一存在から派生した個体が、ここまで違う特徴を得るとは……。おやおやおやぁ!」
1人、知的好奇心を刺激されまくって楽しんでいる進化種がいるけれど、今は会話にならなそうだからスルー。
「ファム、あの2人は強そうだけれど、二足歩行になってすぐだから何が起きるかわからない。サポートしてやってくれ」
「えー……めんどそうにゃ……」
「頼む、お前が頼りだ」
「にゃ……しょうがねーにゃー」
こいつ、下手に出て頼めばなんだかんだでやってくれるのなぁ……。
しかもドヤ顔で。
すごく可愛い。
今度高めのご飯奢るか。
さて、今度こそ奥に進むぞ!
いきなりこんな訳わからない亀とエンカウントするとは思っていなかったけれど、今回の目的は恐竜だ!
迷宮洞窟の奥に恐竜を見た!と報告できるできるのかどうか!?
「そういや、クロコとタケコは恐竜見たこと有るか?あの空洞にやってきたりしなかった?」
「「恐竜?」」
「でかいトカゲみたいなやつ」
「「トカゲ……あー、はいはい。あの甘くて美味しいやつですね?」」
「甘さは知らない……」
うん、参考にならないなこれ。
まあいい!探す楽しみがまだ残っていると捉えよう!
「じゃあ今度こそ行くぞ!」
「「「はい」」」
「わけわかんねーのが増えていくにゃ……」
俺の中では、お前も割とわけわかんねーんだけどな……。
入ってきた通路とは逆側に伸びる洞窟へと進む。
どうやら、洞窟の途中が崩落したか侵食したかで大きな空間となっただけで、基本的には1つの洞窟だったようだ。
先程までと同じような通路が続く。
見つかる生き物は、小さな虫とコウモリ、そしてカニ。
なんでカニがいるんだマジで……?
移動を再開して1時間ほど。
流石に何もなさすぎて帰ろうかという考えが頭を過ぎり始めたタイミングでそれは現れた。
「もきゅ?」
大きなトカゲ……だけど、見た目からして幼体的な特徴をもった丸っこい生き物がそこにいた。
「よし狩るか」
「ボス正気にゃ!?こんな可愛い生き物を!?」
「前提として、こんな所で生き残っている生命体だぞ?どんな奥の手が有るかわからん。かわいい見た目も、相手を油断させるための擬態かもしれない。サンプルとして油断なく狩るのが正解だろ」
「えぇ……?」
だいたいだな、いくら可愛いとしても、種類もなにもわからない生き物だぞ?
噛みついてくるかもしれないし、毒持ってるかもしれないんだぞ?
寄生虫だっているかも知れない。というかいるだろう。
野生の動物っていうのは、どんなに見た目が可愛いとしても危険なんだ。
ファムにはドン引きされているようだけれど、他の面々は特に異論がないらしく、俺は雷切を抜いた。
「もきゅきゅ!?」
俺に殺意を向けられたことがわかったからか、その謎の生命体は、一目散に逃げ出した。
なんだろうなこいつ……ツチノコのモデルになった生き物だったりしない?
普通に鳴いているから、トカゲではない可能性が高いけれど……。
恐竜かなぁ?
「「「「「「もきゅきゅ?」」」」」」」
俺が考え事をしながら謎生物を追った先には、謎生物がミチミチに詰まった部屋があった。
どんだけかわいいデザインの生き物だとしても、これだけいっぱいいたらキモいな。
モンスターハウスだ!
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