第191話
実技試験概要
・最大4人チームでの対戦形式とする。
・大型試技エリアを使用し、自チームのメンバーが全滅するか、護衛対象が破壊、もしくは奪取された場合敗北とする。
・護衛対象は、各チームが独自に準備することとする。
・大型試技エリアは、内部に1辺1kmの正方形の土地が再現されており、今回は森林地帯マップとなっている。
中略
特記事項
・犀果大試は、不正を防ぐために本人のみの単独チームとする。
・犀果大試、並びにその対戦相手に関しては、魔術による不正を防ぐために、武器は銃を使用する事とする。
・犀果大試、並びにその対戦相手に関しては、不正を防ぐために、剣の持ち込みを禁止する。
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「ふっふっふ~ん♪」
「アンタ、なに嬉しそうにしてんの?」
「だってさぁ……銃を使って戦えるんだぞ?しかも死ぬ心配のないルールで!ふふふのふ~ん♪」
学園行事で珍しくウキウキしているかもしれない。
これが!これこそが!スクールデイズ!
「まさかこのような強引な手段を用いてくるなんて……。大試さんの功績は、私の父……王も認めています。それを真っ向から否定してくるとなると……」
「喧嘩する気なんじゃない?」
「聖羅、それが喧嘩で済むのは俺達の村だけだ」
怖いよなぁ。
何考えてるのかよくわからんもん。
いや、きっと聖羅をどうこうしたくて、それに邪魔な俺を排除したいんだろうなとは思うけど、もうすこし理性を働かせた方がいいんじゃ?とも思う。
「このような無法な行為を見逃すわけにはいきません!早急に何か手を打たないと!」
「って言っても、この場合どこがどういう取り締まりをすればいいんだと思う?」
「それは……学園のルールの勝手な変更ですから、学術省に……」
「でも、学園長が認めてんでしょ?高位の貴族どころか、王様にまで喧嘩売ってるような状態だとしても、実際に今相手がやってる事って、俺個人への攻撃だからなぁ。それを理由に色々動くにしても、時間はかかるんじゃない?学園長とか教頭を交代させるにしたって、アイツらは正当な理由で行っただけですってゴネるだろうしさ。もしかしたら、そこに更に乗っかってくる貴族だっているかもしれない」
「ですが!」
「それに、強引なやり方が通る前例だって俺知ってるし」
「お父さんたちも、そんな感じだったんだっけ?」
「みたいだな」
そういうのが嫌になって僻地に引っ越した人たちを知ってるから、ここは強引な手を打った奴らが、それを完遂する方法を既に考えてあると考えた方がいい。
そう考えると、逆にわかりやすくていいかもしれない。
「わざわざあっちがルール設定してくれてるんだ。裏で暗殺とか仕掛けてくるのに比べたらよっぽどいい」
「まあ、ルール設定してるからって暗殺してこないとは限らないけどね」
「大試さんもリンゼさんもどうしてそんなに落ち着いているんですか!?」
「「なんかゲームっぽくて」」
お前それは無いだろ!って思うような手段を相手が持ち出してくるのは十分想定内だ。
寧ろ、初手で魔獣を解き放ったりされてないだけヌルいと言わざるを得ない。
「多分このタイミングでこんなにいきなり事を起こしたって事は、四国のゴタゴタが治まる前にやっちまおうって事なんだろうな」
「まだあっちに結構人送っちゃってるしね。うちも両親と上のお兄様は、魔道具関係って事で向かったきり未だに帰れないみたいだし」
「四国を1度浮かせると、整備が大変だと言いますしね……」
「らしいわね。私には正直魔道具関係はさっぱりだから、聞いただけだけどね」
元女神様、自分の作った世界の物がよくわかってないらしい。
適当だなぁ。
「あと気になるのは、強引に事を進めて、仮に俺をスムーズに排除できたとしてもだよ?それで聖羅を教会内部に拘束して、それでどうするつもりなのかって事かな。そのまま最後まで強引に行ける道筋があるのか、それともその時点で勝利が確定する何かがあるのか……」
「実は、裏で魔族が絡んでて、聖女を魔王に生贄として捧げるとか?無いわよね。普通の人間がどう魔王に連絡とるんだって話になるし」
「エリザさんに聞いてみます?お父上ですから、もしかしたらスマートフォンで連絡が取れるかも?」
「魔王……魔王か……」
魔王と連絡する方法俺知ってるなぁ……。
駅前行くんだよ……。
「でも、魔族はそう言う回りくどい事したがらないってファムは言ってた」
「聖羅、それでもたまに変わり者ってのはいるものよ」
「王都の警備も万全ではありませんからね……。申し訳ありません……」
だね。
だってマッスル鍛えてる魔族この前倒したし、カレー屋開いてるもん魔王。
スマホを見ると、会長と、生徒会に行った理衣から色々連絡が来ている。
心配と励ましとガチギレのメッセージを見ながら、今やるべきことを考える。
「とりあえず、俺に今できることは、その実技試験対策かなぁ。あと、皆実技試験に夢中になってるけど、筆記試験もあるんだろ?そっちも勉強しないと」
「「「あ」」」
夏休み前に行われる期末試験、実技があるという事は当然筆記試験もある。
魔術が扱えない俺は、そっちでカバーする必要があるためにそこそこ自習しているわけだ。
この前委員長から、実技試験はダンジョンのクリアでいいと言われて安心していたけれど、そうじゃなかったとしても大して対策は講じなかっただろう。
それより必要なのは復習だ。
「赤点回避しないとなぁ……」
「なんか、いきなり現実的な問題に引き戻された気がするわね……。アタシは学年1位狙ってるくらいだから赤点なんて無いと思うけど!」
「すげぇ自信」
「私も!勉強は頑張っていますよ!」
「流石王女様」
「……勉強って、しないとダメ?」
「ダメだろ?」
「じゃあ、大試が教えて」
「良いけど、寝たら起こさないからな?」
「うぅ……!」
そんな可愛く睨みつけても怖くないぞ!
勉強は、自分でやる気が無いと覚えないんだよ!
やる気ない状態でどんだけやっても頭に入らん!
「時間あるなら、皆で勉強会でもやるか?」
「いいとおもう!すごくいいと思う!」
「まあ良いんじゃない?アタシも教えられるわよ」
「私も賛成です!……時間があるかはわかりませんが……」
皆で勉強会って実は憧れてたんだよな。
前世だと、終ぞ行えなかったイベント。
神也とは一瞬テスト勉強をやるって気になって集まったけど、すぐに神也の部屋にあるマンガの読書会になったからなぁ……。
懐かしい……。
「あ、そうだ!ねぇ大試、こんなこともあろうかと用意してたものがあるのよ。折角だし、今日この後、家に来てくれない?」
「用意してたもの?」
「アンタ用の特注品よ!見たら絶対驚くわ!」
「へぇ……なんだろう?気になる」
「驚かせたいから、見てからのお楽しみよ!」
リンゼがドヤ顔で車を呼ぶのを見ながら、俺は「こんなこともあろうかと」って言葉は、本当に存在するんだなって感動していた。
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