第123話
「だから言っているでしょう!?アンタたちは私に操られて……」
「まずそこから間違いなんじゃよ」
「そうだな。お前程度の魅了魔術が俺達に効くわけがない」
「はい?」
タヌキとタヌキとタヌキの恋模様。
一体俺は何を見せられているんだ?
とりあえず、後ろで王子が死にかけてるのを多分みんな忘れている。
「でも隠神、アンタ、さっきまで私に操られてたじゃない?」
「それが不思議なのよなぁ……ここ数週間だけの事なんじゃよ。じゃから、花子の力に何か他の物が混ざっていたんじゃろう。まあそんなもの、花子をみて吹き飛んだがな!」
「歳でボケたんだろう?ジジイはさっさと隠居しろ。周りのためにならん。だから花子は俺が面倒を見る」
「じゃかぁしい!お主も大して変わらんじゃろうが!」
「ほら見ろ、年寄りはすぐキレるんだよなぁ」
さっきあんなにショックを受けたような顔していたのに、随分元気になったなこのタヌキたち。
メンタル強いわ……。
「そういや、さっきなんであんなにショック受けていたんですか?」
「いやな……我輩、何度も『心からお主が好きじゃ!』と伝えていたのに、まさかそれがただの魅了魔術から出た言葉だと思われていたとはのう……流石に堪えたわ……」
「同じく。魅了などかけてこなくとも、俺たちはとっくに魅了されていたというのにな」
「アンタたち……」
「お母さん!おめでとう!」
「えーと……これはありがとうでいいのかしら?」
ジジイ2人と人妻(人外)のラブゲームに付き合ってなんて居られない。
さっさと事態を解決したいんだ俺は。
もっと言うと、帰って寝たい。
今日の事を思い出にしてしまいたい。
可能なら、夢だった事にしたい。
「あの、花子さんと隠神さんが正気に戻ったなら、この状況何とかしてくれません?」
「なんとかと言われても……冷静に考えると、なんで私ここにいるの?しかも何でタコ……イカ?の脚が頭とかから生えてるの?私がなりたかったのって、明小みたいなボンキュッボーン!な人型だったんだけど?」
「吾輩もよくわからん。るるいえとか言うものの概念を呼び覚ませば、花子が蘇るとだけ何故か考えておったわ」
ダメだこいつら……。
記憶が当てにならん……。
「くくく……良いザマだなぁ隠神……そして、犀果の息子よ……」
あ、なんかミイラが喋った。
って、王子だっけかこれ?
「私がなぁ……悪霊に命じてなぁ……貴様の命より大切な雌タヌキの魂に黒魔術をかけてやったのよ……万が一の保険でなぁ……」
「黒魔術ってタコ足を生やす術だったのか?」
「フフフ……これはなぁ……クトゥルフという太古の神のなぁ……」
「いや、あの神話ってできたの割と最近だぞ?なんなら、かぐや姫とかの方が古い」
「…………なんだと?神話だぞ?」
最近作られたな?
少なくとも前世の世界ではな?
さて、こいつの浅い理解で作られた神とやら、どうやって倒したもんかなぁ……。
でも、下手にディティールに拘って作られたものより、『超強い!』とか『最強!無敵!』とか設定されていた方が怖いかもしれんけどさ。
何にせよ、王子がミイラっぽくなるほどの魔力をつぎ込んだ一品のはずだし。
しかも、四国を浮上させて引っ張り上げるという力技まで使ってやっと実現したんだろうし、あまり悠長に見ている訳にも行かないかもしれない。
どうしたもんかなぁ。
目の前で痴話げんかみたいなのしている触手タヌキの首を撥ねれば止まるのか?
それとも、話の流れ的に、四国の下でひっぱりあげられているであろうルルイエとか言うのを吹き飛ばしたりしないとダメか?
情報が欲しい!
当てになる情報が!
ここにいる敵側の奴と敵側だった奴ら、皆持ってる情報が当てにならん!
その時、俺のスマホが光り始めた。
この世界に転生してから、電子機器の類をほとんど使っていなかったから、よく存在忘れて充電すらしてないんだけど、何故か充電が減らない不思議アイテムだ。
多分、アイとピリカが何かしている。
ってことは、この光もそのどっちかがやっているんだろう。
『犀果様、聞こえていますか?』
「聞こえているぞアイ。派手な光だな?」
『自信作のイルミネーションです』
「もっと別の所で発揮してほしいな……で、どうかしたか?そういえばさっきから見なかったな?」
『はい、現在四国のコントロールルームにいます。四国のコントロールを完全に掌握しました』
「え……有能すぎて怖い……こっそり何してんの?」
こいつ、ちょいちょい現代の情報技術超越してくるよな?
四国全体のコントロールをこのちょっとの時間で奪うって、スパコン以上の性能が必要なんじゃないか?
行っちゃうか?量子いっちゃうか?
テレビの天才ハッカーたちですら無理だろうよ?
「この短時間でよくそんな場所に辿り着いて操作なんてできたな?」
『頑張って反応を辿り走りました。100m5.2秒の俊足をお見せ出来なかったのが残念です』
「この世界だと、どの程度の速さなのかイマイチわからないな……」
『それより大事なお知らせがあります。結論から申しますと、10分以内に事態を解決できないと、四国がイカ足に呑まれます』
「ごめん、理解が出来なかった。10分以内に解決できないとどうなるって?」
『四国がイカ足に呑まれます』
「おっかしいなぁ……言葉は理解できるのに意味が全く理解できねぇ……」
(はぁ……)とため息をついたような雰囲気が伝わってきた。
なんだよ!?
だったらお前いきなりそんな事言われてはいそうですかっていえるのかよ!?
いや、無表情でいいそうだなコイツ。
どういうことなのかチンプンカンプンでいると、目の前の空間に太三郎さんが使っていたようなホログラム画面みたいなものが出て来て、そこに何やら気持ちの悪いヌルヌルが海から生えているのが映っている。
あのさぁ……なんでこうもいくつもいくつも俺の理解を超えたもんを叩きこんでくるの?
『現在、犀果様の目の前にいる魔術生物をトリガーにして、海中から人造神性体が浮上して来ています。既にその魔法生物とのリンクは途切れており、魔法生物を処分した所で何の解決にもならない状況です』
「つまり、四国を飲み込むサイズの生物っぽいものを10分以内に倒さないといけないわけだな?」
『いえ、残り9分14秒です』
「時間って長いようで短いよな!」
無理じゃね?
だって、四国を飲み込む大きさだぞ?
四国より大きいのなんて、この国には本州と九州と北海道しかないんだぞ?
そんなサイズだったら、宇宙そらから降ってくるだけで人類滅亡させられるクラスだろ。
『そこで私は解決策をご用意しました』
「流石優秀なサポートキャラ!どうすんの?」
『前提として、この四国は、単体で浮遊するためにかなりの頑強さを魔術によって得ています』
「まあそうだよな、島を浮かせるんだもんな」
そうしないと、そりゃ崩れたりするよな?
『それを念頭に置いたうえでお聞きください』
「なんだ?随分もったいぶるな?」
『かなりの反対が予想されるので……』
「……よしわかった。覚悟したから、聞こうじゃないか」
聞きたくない聞きたくない聞きたくない聞きたくない聞きたくない!
『オペレーション、フォーリンエンジェルです』
「なるほど、つまり四国をこのまま落としてぶつけるって事だな?」
『格好つけをかねたごまかしを無くせば、そうなりますね。オペレーション名に関しては、メテオとどちらにするか悩んだのですが……』
これから俺たちは、天そらから落ちて神を倒すらしい。
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