剣と魔法の世界に行きたいって言ったよな?剣の魔法じゃなくてさ?
@mk-6
第1話
────大試 大試よ 目を覚ますのだ
うるせーぞ神也、何時だと思ってんだ?
────私は神也ではない 目を覚ますのだ
…………んだよぉ。
目を覚ますと、目の前にぺかーと光ってる人がいた。
その光ってる人以外は、一面長閑な背の低い草原が広がっている。
なんだこの状況?
何かのドッキリだろうか?
俺に誰かがこんなアホなドッキリを仕掛けるメリット……うん、無いな!
「どちら様ですか?」
あまりにも訳が分からな過ぎて、逆に冷静になってしまい、ものすごく普通な事を聞いてしまう。
光る人影に対して、あまりに失礼ではないだろうか?
もう少し面白い事を聞いてみたかった。
「大試よ、よく聞くのだ。お前は死んだ」
「神也、まだそのキャラで行くのか?」
「だから私は、神也ではない。神だ」
「せめて声変えてから誤魔化せ」
今の学校に入学して初めてできた友人である斎藤神也さいとうしんやの声で話す自称神相手に、俺は一体どう接すればいいんだろうか。
体、光ってますよ?
「それで、俺が死んだってどういうことだ?」
「そのままの意味だ。お前は、死んだ」
「なんでだ?」
「非常に言いにくいが、私を狙った攻撃に巻き込まれたのだ」
よくわからないけど、巻き添え食って死んだらしい。
しかも、死んだという自覚すらない。
「死んだ状況全然覚えてないわ。巻き込まれたってどういう事よ?」
「学校からの帰宅中に、私を狙った空間爆破攻撃が逸れて、隣にいたお前に直撃したのだ」
「学校から俺と一緒に帰るのなんて神也くらいしかいねーだろ!」
「私は、神也ではない」
「なんでそんな頑ななんだ……?」
とにかく、俺という存在は、神様を狙った攻撃で消し飛ばされたらしい。
「で?俺はこの後地獄にでも行くのか?天国に呼んでもらえる程良い事をした覚えも無いし」
「いや、今回の事は完全にこちらの不手際だ。具体的に言うなら、私の妹の手による攻撃でお前は死んだのだ」
「神様が兄妹喧嘩すんなよ!」
「美味しそうなプリンを名前も書かずに冷蔵庫に入れていた奴が悪い」
なんだか頭が痛くなってきた。
あれ?
俺って今痛み感じたりとかあるのか?
まあいいか。
「大試、お前はもう元の世界に戻ることはできない。しかし、せめてもの罪滅ぼしとして、お前にはこれから望んだ世界へ転生する権利を与えよう」
「望んだ世界?どのくらいまで望み通りになるんだ?」
「戦いで負けた男の子が女の子にされる世界くらいまでなら可能だ」
「それお前の性癖じゃねぇか」
「私は、神也ではない」
8割がたこの状況は、夢の中の出来事だと考えているけれど、万が一実際に起こっているのであれば、どう答えたら良いだろうか?
仮に夢なら、変な夢を見たなとちょっと恥ずかしくなるだけだし、実際に起こっているならここでちゃんと答えておかないと大変な事になる。
となると、俺の答えはこれだ!
「剣と魔法の世界に行きたいな!それで可愛い女の子に囲まれてぇ!」
「成程、ファンタジーの世界でオークに転生して女の子から逆に……ということだな?」
「だからそれお前の性癖じゃねぇか」
「いや、これはお前の性癖だ」
「やっぱお前神也だろ」
確信を持って言える。
このバカは俺の友達だ。
でもまぁ、もういいか……。
「それで、可能なのか?」
「うむ、丁度良くお前の希望通りの世界があってな、ずばりお前を殺した神が作り出した世界だ」
「行きたくねぇ……」
「心配するな、私の妹は管理者権限を剥奪され、今はその世界で転生刑を待つ身となっている」
「転生って刑なのか」
「神が神の力を封印されての転生だからな。イキっている神には良く効く」
イキリ妹を理解らせるのか。
それ、俺が死ぬ前にやっておいてくれよな?
「では、すぐにお前を新しい世界に送り届けよう!妹が、あの言わずと知れた大人気ゲーム『フェアリーファンタジー』にハマっている時に作り出した世界だ!ゲーム好きのお前なら、プレイした知識を使って、きっと楽しんでもらえるだろう!」
神がそう言うと、俺の体も光りはじめた。
これが、転生だかなんだかの演出なんだろうか?
でもさ、その前に気になる事あんだよな……。
「いや、俺はフェアリーファンタジーとかいうのやったこと無いぞ?」
「何!?お前あのシリーズやったこと無いのか!?嘘だろ!?」
「RPGは、あんまりやらないんだよ俺。ファンタジーもののマンガなら結構読むけどさ。」
「えぇ……?マジかぁ……」
俺もフェアリーファンタジーという名前は知っている。
大人気ゲームシリーズで、据え置き用だけじゃなくオンラインゲームにもなっている作品だ。
だけど、あまりにやってて当然みたいに言われることが多くて、天邪鬼な俺は逆にやりたくなくなってしまっている作品でもある。
そもそも、RPGというジャンル自体そこまで得意でもない。
俺が一番やってるのは、箱庭ゲーかなぁ……。
「…………すまないが、もうすでに後戻りはできん。大試から聞いた要望書も、既に妹から引き継いだ女神に送ってしまったしな」
この神、ぺかーと光って白飛びしてるせいで、表情なんてわからない筈なのに、イヤな汗をダラダラ流しているのが雰囲気で分かる。
しょうがない……。
「まあいいさ。やった事は無いけど、ゲームだって言うなら楽しめるんだろ?そこでいいよ」
「そうか?悪いな」
「いいって。俺とお前の仲だろ?」
「ふっ、ああ!まあ私は、神也ではないが」
何か名前がバレてはいけないルールでもあるんだろうか?
まあいい。
転生する覚悟でも決めておくか。
「あ、最後に、俺の両親へ先立ってすみませんって謝っておいてもらえるか?」
「……わかった。それは、確かに俺の仕事だろうな。」
「頼むぞ、相棒」
「ああ!では、さらばだ!」
それを最後に、俺の意識は深く沈んでいった。
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