第13話 チキンステーキはステーキなのか
というわけで、チャーキチは食べてくれるそうだ。
キャットフード作りを続行。というか、あとは冷ますだけだけど。
続いては俺たちの食事だ。
チキンステーキ。ステーキと言う名の単なる焼いたもの……あ、牛でもそうか。
世界異変で鶏、牛、豚は絶滅しなかったが、ちょっと変異したんだよね。
巨大になった。あと、凶暴になった。
飼育が大変らしく、最近じゃダンジョンで獲れる肉が売られているようだ。
今日買ったのは、ダンジョン産。
ダンジョン産のほうが安い。
数も少ないので、飼育のヤツはめっちゃ高い。だけど、解体するから全部使われる。ダンジョンではドロップしないような稀少部位とかも売られているようだ。
もちろん、ご令息サマだったときは食べたことあるよ。
稀少部位は興味ないし、ダンジョン産でじゅうぶんかな、と思った。
で、鶏肉のもも肉に塩をすり込み、油を敷いたフライパンに乗せて、弱めの中火でじっくり焼く。ついでに切った葱も焼く。
皮がこんがり焼けたら裏返して反対側も焼いて、胡椒とレモン汁を振って終わり。
フライパンは洗わず適当に切ったキノコを炒めて柚子胡椒をちょっとだけ入れる。俺はたくさん入れたいけど、からくするとモモが食べられないからね。
「よし、完成!」
皿に盛って終わりだ!
ちゃんとナイフとフォークを出した。
ちゃぶ台に並べると、モモがちょっと顔をしかめる。
「……兄ちゃん、箸のほうが食べやすいぞ」
と、ナイフとフォークを使いたくないらしいモモが、ふくれながら言った。
「昨日だってナイフとフォーク使ってたじゃないか」
「昨日は我慢して使ったから、今日は箸が良かった!」
「まーまー。ステーキにはナイフとフォークだろ。雰囲気雰囲気」
そうなだめたらしぶしぶとナイフとフォークを持つ。
ふくれながらも、モモはちゃんと使えるんだよね。
「魔王なら、威厳をもってテーブルマナーも完璧じゃないといけないんじゃないか?」
って俺がツッコむと、ギク、とモモが体を強張らせた。
「…………そうかもしんない、から、練習する!」
「うん、そうしろ。モモはやればできる子なんだから」
そう励ますと、フンスと鼻息を荒くし、丁寧に食べる。
素直でおだてに弱い俺の妹、最高にかわいいなあ!
翌日は、洗濯やら掃除やらに明け暮れ、翌々日。
チャーキチも連れ、ダンジョンに向かう。チャーキチ、高く売れそうだし家に置いていくより安全だからね。
実際、副支部長もあんな目に遭ったというのに、
「売るなら買うわよ! いくらでも積むわ!」
と、鼻息荒く言っていたもんなぁ。
隠し部屋にある宝箱の中身は、全部稀少だ。
性能はともかく、一点ものであることが多い。
ゲームではそうだったし、現実でもそうだろう。
だから、チャーキチはオンリーワンの魔物になる。
「なぁモモ。チャーキチって、前世でも同じ見た目だったのか?」
「ん? そーだ。だから、すぐわかった」
そうなのか……。
「じゃあ、チャーキチみたいな見た目の奴は、いっぱいいたんだな」
「いないぞ! チャーキチ兄妹だけだ!」
と、モモが答えた。
「兄妹……? まだいるのか?」
「あと二匹だ! 頑張って見つけような、兄ちゃん!」
……隠し部屋の宝箱の中身が全部ペットになってそうな件について。
ただ、このダンジョンだと、隠し部屋はあと一つ。最下層になる。
だとすると……。
「このダンジョンだと、あと一つだけで、しかも最下層だ。他のダンジョンにもあったけど、そっちはここの隠し部屋ほど見つけにくくないので、もう見つかっていると思う。残るは、半年後の新ダンジョン。ここに隠し宝箱がある。ただし、先着順だ。……それにはやはり、金級になってないとまずいな。前世のゲームじゃ主人公が宝箱につられて深層部へ行き、生贄イベントが発生するんだ」
モモが顔をしかめる。
「主人公、って勇者のことか?」
「まぁ……そうかもしれないな」
「なら、邪魔するぞ! 金級になればいいのか!?」
モモが張り切った。
「そうだ。金級なら、新ダンジョンへの立ち入りを禁止できる。本来はFDECがやるんだけど、緊急事態の場合は金級ならできるんだ。まぁ、そもそも登録してない奴がダンジョンに勝手に入るのは禁止なんだけどな。だけど、新ダンジョンの場合は『ダンジョンだとわからなかった』っていいわけが通じる。だから、最低でも銀級になって警告を出せるようになりたい。だけど、銀級には強権発動ができないから、連中が聞かずに勝手に入るとどうにもならない。金級なら、強権発動ができる。逆らう場合は力尽くで排除できるぞ」
「やったー! 金級になって力尽くだ!」
モモが万歳している。
「いや、最終手段だからな? いわれなき暴力は、ダンジョンから告げ口されるからな」
と、モモに釘を刺した。
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