後ろめたさの副作用

おいちゃん

第1話

後ろめたいこと。「あの時、こうしてたなら。。。」


誰でもあるはずで、過ぎた過去の1分1秒に囚われて。それがどこまでも尾を引く。良く言えばただの後悔で、後悔のまま自己消化できればいいが、タチの悪いのは墓場に行くその時まで絵に書いたような悪夢を見せてくれる。勿論、自分の意志とは無関係に。いや、自分自身で作り出してるのかも。でもきっと。いや絶対に自分の脳みそはそんなものは求めてない。誰が、ロメロのゾンビ映画を借りに行かなかった事を根に持つばっかりに夢の中であのガンジーゾンビと面談したいと思うんだ。扉を開ければやつがいて。椅子に座ればしっかりご対面。なんでだよ。


まぁ、ヨタ話はこんなところで。。。

信号待ちをしてた俺の目の前で子供が補助輪付きのチャリンコでSUVに撥ねられた。信号無視して子供が横断したのだ。信号は守らないくせに律儀に横断歩道を使う。親の教育の賜物だ。

そんな一瞬。


ガキはびくともしていない。


SUVのドライバーは初めこそ冷静に。法令に。自分自身のモラルに従って。行動してるように見えた。


次第に取り乱す。狂うわ狂うわ。よく見ればその子供、なんかどこからか色々出ている。


傍観者は非常に楽なもんで。スクリーンの中、小銃片手に突撃、突っ込んでくるレシプロにむけて機銃掃射。それが演者にしろ、実際のその時その場所、その人物にしろ。狂ってこそ作れるその過去とリアリティだ。それをオカズに自身の脳みそのシワを増やすだけ。


しっかり自身の天授とその運命、神様とのその約束を果たしたその子供と出会うまでは普通だった。そのドライバー。


なんか、もつれてチグハグっぽいから、ここで言い訳させてほしい。(ドタマの引き出しが2つ程しかないもんで。)今目の前で色々狂ったのであって、元々俺ほど狂人ではなかったはず。


人がキチガイになる時を目の当たりにしたのだ。いやいや、出来たのだ。


完全に生き物としての機能を失い、くの字に横たわってる "それ" よりも頭を掻きむしってキレたチンパンジーばりに地面を引っ叩いてるそいつに目が行く。後ろめたさなのか後悔なのか。


本来マイノリティである狂人に属する俺は、俺以外みな常人で、強く清らかで澄んだメンタルをお持ちだと思っていた訳で。こんな容易く人が物理的にも心理的にも簡単にぶっ壊れちゃうもんなんだって。考える暇さえあって。


いや待てよ。


その子供の体が痛みを覚えるその間。意識が痛みから解放されるその数秒。


俺は「あのガキあぶねぇな」と。。。でもしっかり俺の脳みそはその役立たずな口を動かした。


その声はただの傍観者の声でしかなく、締め切って空調効きまくりの車内からではそんなの虫の羽音にも満たない。


ただ、その時、車の窓を開けて「おらあぶねえぞ」と言えていたなら。


とっくに薬と酒で干からびた俺の脳みそはそんな考えを持てるほど自分に余裕があったのかと、少し悦に浸る。誰一人助けてもないのに。


今日も据わった目で見れる夢はたぶん狂ったドライバーかはらわたむき出しの少年。もしくはロメロのガンジーゾンビだろう。


一瞬の興奮と非現実の代償たるこんな副作用、誰も願っちゃいない。





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