カノジョを寝取られた俺に何故かモテ期が到来したんだが? 今更復縁なんて無理に決まってるだろ?

さい

第1話

「晴也くん……///」


 俺こと白宮薫は、この日、見てしまった。


 彼女こと、錦木沙耶香が、俺以外の男と──同級生の男子生徒と教室でシている現場を。


 呆然と立ち尽くす俺に気づく沙耶香は俺を見て言った。


「あっ、見つかっちゃった」


 と。


 悪びれた様子が一切感じ取れなかった。

 それに比べて、間男側は、顔を真っ青にして。


「いや、これは……」


 とんでもなく罪悪感を感じた表情をしていた。


「晴也くん、続けて///」

「えっ!?」


 こんな状況の中、平然と欲望を満たそうとしている沙耶香に間男は驚く。

 当然俺も、驚きが隠せないでいた。


 俺の知っている沙耶香じゃない。

 沙耶香は清楚で、恥ずかしがり屋な人だったはずだ。

 でも、俺の前にある沙耶香は性欲モンスター。


「もお、薫〜。今いいとこなんだから、後でラインするでいい?」


 なんなんだよ、こいつ。

 頭おかしくないか!?


 両手に拳を作り、言った。


「いいや、もういい。沙耶香、別れよう」

「いや、ごめん……」


 と、間男はボソッと言った。

 

「いいよ、俺が悪いんだろどーせ。楽しめよ、セックス!!」


 こうして、俺は失恋をした。

 彼女を寝取られてしまった。



「沙耶香〜」


 自室、俺は一人、ベッドに寝転がりながら無様に泣く。


 つらい。

 心が痛い。


 沙耶香とは結婚するんだろうなあ、なんて思っていた。

 彼女と出会ったのは高校一年。

 同じでクラスで、初めての席替えで隣になったのがきっかけだった。


 まさか、こんなことになるとは。


 くそくそくそ。


 脳内には、先ほどの沙耶香と間男がシていた記憶がリピートされる。


 こんな時でも、勃ってしまう俺は何で愚かなのだろう。


「なんで、裏切るだよ〜、沙耶香ァ」


 ズボンをずらし、パンツをずらし、手を下腹部にやった。


 抜いたら、沙耶香のことは忘れるとしよう。

 星の数ほど女はいる、と聞いたことがある。

 そうだ、俺の恋愛はここからだ。


「よお〜し、沙耶香よりいい人を見つけてやる〜……そろそろ……」


 突如、ガチャリ、と窓の鍵が開き、ガラガラとスライドされ、


「ここよね……」


 一人の女性の声がした。


 目の前に現れたのは、黒い下着のような姿の尻尾の生えた、白髪ボブの少女──つーか、浮いてる!?


「あっ」


 俺は彼女の顔に向かって、発射した。



「初対面ですごいですね……」

「いや、ごめんなさい……人が来る……」


 正座をしていた俺は立ち上がり、少女に向かって指をさした。


「ちっ、ちがーう!! なんなんだ、お前!! その尻尾、宙に浮いてたよな!?」


 少女は、ニヤリと白い歯を見せて。


「私は、サキュバスのシエラです」

「サキュバス?」

「ええ、サキュバス……あなたには、これからシてもらうことがあります。そう、彼女を寝取られてしまった哀れな薫さんには」

「哀れ言うな、哀れ……つーか、なんでそれを」


 シエラは分厚い冊子を異空間から出した。


 うん、突っ込まないでおこう。


「これはあなたの説明書です。ここには、あなたのことが全て書かれています」

「こわっ、プライバシーの侵害だ」

「はいはい、とにかく、薫さんは明日から一年間、モテ期が訪れます。私はそんなモテ期の到来する薫さんをサポートするためにやってきました」


 モテ期が訪れる?

 何を言ってやがる……この人は。


 シエラは、左手を丸にして右手人差し指だけをピンと伸ばし、左手に向かって右手を刺した。


「これから、薫さんには達成して欲しい目標が存在しております。それは、エッチエッチエッチしまくりなハーレムスクールライフ!! めざせ、1000P!!」


 夢か?

 いっそのこと、沙耶香のことも全て夢だったら、なんてことをただただ願った。

 いや──。


「そっ、それは本当か!?」

「ええっ、本当ですよ」

「しゃあああ!!」


 彼女というものがなくなった今、遊び放題だ。


 よし、ヤりまくろう!!


「その目標、達成してやるッ!!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る