第3話 リアル side I

体に力が入らない。さっきまで抱きしめられてたんだよ。なんていい夢。だけどリアルでの関係性を思い出して悲しくなる。俺たちはただの先輩後輩。週に1度のゼミで会うだけ。学内メールのアドレスしか知らないような仲。なのにいつのまにか夢に見るほど大好きになってた。優しくてカッコよくて…でも男の俺なんて恋愛のスタートラインにさえ立ててないよね。…今日はゼミの日だ。俺はなんとか立ち上がった。


「隆貴ゼミ行こうぜ」中学からの親友、佐藤和高に声をかけられる。人見知りの俺はいつもカズに頼っちゃう。「今日こそ木戸くんとLINEの交換しろよな」俺が木戸くんのことを好きなこともすぐバレた。「…したいけどさ…無理だよー」なんて話してたら「何が無理なん?ってかはよせな遅刻やで」すぐ後ろから木戸くんの声。うぁー!聞かれてないよね。もう心臓がバクバク。「ほら、はよ」「はい!すみません。タカ、急ごう」俺はまたカズに頼りきり。


今日も木戸くんはカッコいい。「池田はどう思う?」なんて聞かれても緊張して答えられないよ。そんな俺に困ったように微笑んで「じゃあカズは?」あぁ、もう泣きそう。せっかく話しかけてくれたのに。カズが苦笑して俺の頭をなでた。

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