Children's Stories

涼宮 真代

第1話 未來と颯真

この町は変わらない。

私たちは変わっていくのに…。



母親として奮闘中の夜白は何とか2人の子供を15歳まで育ててきた。

妖狐の世界であれば独り立ちする時期ではあったがここは人間界。

まだまだ頑張っていかなければならない。

この子たちには人には言えない秘密がある…それは人と妖狐の血を受け継いでいる、いわゆる半妖だった。


そんなある日の朝…。

夜白はゴミ出しに外に出ていた。

「あ、夜白ちゃんおはよう。」

胡桃も同じマンションに引越して来ていた。

「おはよう、祐治さんは?」

「来週から海外に単身赴任だにゃ…。」

「そうなのね、大変ね。」

「そうでもないにゃ、いない方が私は楽できるから〜。」


嬉しそうだった…。


「かあさま、胡桃おばさま、おはようございます。」

未來みらいちゃん、おはようにゃ。」


未來…颯真と夜白の双子の姉。

夜白に似て銀髪で髪の長さは腰ほどで青い瞳をしていた。

活発で成績優秀。


未來みらい颯真そうまは?」

「え?知らなーい。」

「それじゃ、いってきまーす!」

「あ、ちょっと…。」


双子なのに、こうも違うものなのだろうか姉の未來みらいは小さい頃からしっかりしていたが弟の颯真そうまは他人には興味が無いというマイペースな性格だった。


颯真は颯太に似ているようだ…。

髪は茶色で短めで無愛想なところはそっくりだった。


「いってきます…。」


颯真そうま、朝から不機嫌な顔しないの!」

「あ?してねぇし…。」


もう…。


「男の子なんて、そんなものじゃないの?」

「そうなのかしら…?」

「そういえば…うちの萌香もかは…?」

萌香もかとは、胡桃と祐治さんの娘で未來たちとは2学年違う1年生だった。


「おはよ〜ごさいま〜す…。」

萌香もか!ボーッしないの!」

「はぁ〜い…。」


颯太さん・・・あなたはいまどうしていますか?

子供たちは私なりに育てています。

男の子にはやはり父親の存在が必要だったのかも知れませんね。

         ◆

         ◆

         ◆

未來みらいが学園に着いて程なくして颯真も登校して来た。


「颯真…そんな不機嫌そうな顔しないで…。」 

「あ? してないだろ…。」

「してるよ」

「してねぇって言ってるだろ。」


「してるよね〜?みなとくん。」

「おはよう、うん颯真…してるね。」

みなと…てめぇ。」


姉貴の事が好きだからって肩持つのかよ・・・。



その様子を陰から覗っている生徒がいた…。

まったく教室に来てからもまだやってるですね…。


「あの2人には困ったものですね…。」

もう少し様子を見てやめないようなら厳重注意です!


「学校まで来て姉貴ヅラすんなよ!」

「なによ、その言い方…。」

「うるせぇなー!!」


「むっか〜〜!!」


「颯真のバカ!オタンコナス!!」

「もう、知らないから!」


そう言って未來は教室を飛び出して行った。


キーンコーンカーンコーン…。


「おい!未來朝礼だぞどこ行くんだ?」

「よ〜し、全員座れ〜…。」


「颯真、未來は何処に行ったんだ?」

「さあ、忘れ物でもしたんじゃないですか?」


その頃、未來は中庭にいた。


バカ颯真のやつ本当ムカつく…。

あんな言い方しなくたって良いじゃない…。


ザワ…。

(なんだ…このイヤな感じ…外から?)

颯真は気配を感じ中庭を見下ろした…。


(姉貴と誰だあいつ…。)


「キミは双子の姉の方だね?」

「誰ですか?あなたは?」

「ボクはキミたちと同族だよ。」


キミを迎えに来た…。

私を?


「姉貴!!」


バッ!!


颯真は教室の窓から飛び降りた…。


あのバカ・・・なんてことするです!?

人じゃないと自分からバラしてるとしか思えないです!!


「颯真!!ここ3階!!」


おおーすげー颯真かっけー!!

危ない!!

キャアァ〜!!


バカ姉貴!!

そいつヤバい奴だ離れろ!!


「え…?颯真…?」


ザザーッ!


何でわからないんだよ!

イヤな気配がビリビリ来るだろが!


「ほぅ…キミが弟の方か…どちらかと言えばキミは人間に近いね…。

キミには用はないどきたまえ。」


「なにを?」


「ボクは弱い奴には興味がないんだよ」


なっ!?

ふざけるなァァァ!!

颯真は右のこぶしを振るった。

ブン!!


「おっと…こわいこわい。」

「今日のところは引き上げるとしよう…夜白さんに宜しく〜。」


そう言い残して姿を消した。


「な…なんで母さんの名前を…?」

「母様の知り合いなのかな…?」


母さんに聞いてもきっとはぐらかすに決まっている…。

父さんの事もそうだ…オレたちには父さんと過ごした記憶が無い。


眞白ましろおばさんならあるいは?」

「颯真…お姉さんって言わないと殺されるよ~…。」


『こら!お前たち、いつまでサボってるんだ?とっくに授業始まってるぞ!!』


「あ、やべっ…。」



放課後・・・。


ガヤガヤ・・・。


「姉貴、先に帰るぞ・・・。」

「あ、ちょっと待ってよ~。」

「未來ちゃん・・・ボク先生に用事頼まれてるからまたね!」

みなとくん、さよなら。」

「さよなら。」


狐塚くん・・・ちょっといいかしら。


「なんだよ委員長・・・。」


「あなた達ちょっと普通じゃないわよね~・・・。」


朝の事か…無我夢中だったから窓から出てしまったしな・・・。

こりゃヤバいな・・・先生にも厳重注意されたし・・・。


「他の人はごまかせても私の目はごまかせないからね!」


「あーはいはい・・・じゃあな委員長・・・。」

「ちょっと待ちなさいよ!」


クラス委員長こと・・・泉水 麻衣子

オカルト研究部の部長という面倒くさいやつだ・・・。

こいつに関わるとロクなことにならないと直感した。


さっさと下校するに限る・・・。

校門のところに萌香もかがいた。


「あ、颯真くん・・・一緒にかえろう?」

「まあ、いいか同じマンションだしな・・・。」

「うん!」


少し遅れて未來みらいが出て来た。


「颯真~! まっ・・・て・・・。」

「ふ~ん、なるほど・・・萌香もかちゃんと・・・颯真がんばれ!」

              ◆

              ◆

「朝さわぎになってたけど・・・窓から飛び降りたの颯真くんでしょ?」

「あはは・・・そんな騒ぎに・・・なるよなぁ・・・。」

「ダメだよぉ~ケガしたらどうするの?」

「あぁ・・・気をつけるよ。」


萌香もかとは何故か普通に話せた・・・。

気持ちが楽になる・・・自然体でいられる気がする。


「ホント最近母さんが煩くて参るんだよなぁ・・・。」

「うちもだよ~ゲームしてないで勉強するにゃ~って毎日。」

「変わらないんだなぁ・・・オレも言われてる。」


『へ~・・・姉さまちゃんとお母さんしてるんだね~。』


眞白ましろおねえさん!」

「あは、萌香もかちゃん久しぶりだねぇ。」

「おばさん・・・。」

「え~?なんて~~?」

「おねえさん・・・。」

「はい、よくできました~、そうちゃんも久しぶりだね。」


母さんの妹の眞白ましろおば・・・もとい姉ちゃん数カ月に1~2度

ふと現れる・・・。

今回は何しに来たんだか・・・。

「あ、そうだ…朝学校にさ・・・。」

オレは眞白ましろ姉ちゃんに朝の出来事を話した・・・。


「それで…その人は姉さまに宜しくって言ってたの?」

「うん・・・何者なんだよ一体・・・。」

「颯ちゃん・・・このことは姉さまに内緒にしておいてね。」

「いいけど・・・なんで?」

「あとで話すから・・・未來みらいちゃんは?」

「まだ学校かも・・・?」


眞白ましろ姉ちゃんは急に険しい顔をした・・・。

そうちゃんは姉さまのとこに帰ってて・・・。

私は未來みらいちゃん迎えに行って来るから。」


オレの知らない所で何かが起きようとしている・・・?

そんな気がした・・・。

母さんの事を知っているやつが現れたいったい何者なのか…。

未來みらいを狙って来た理由は…?



第2話予告。

未來みらいを狙って来た男の正体があきらかに!

彼女の眠っていたする・・・だがその時・・・。






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