CH‐U‐KA 外伝
小鳥遊咲季真【タカナシ・サイマ】
Kuroの編
kuro.01
それは黒い色だった。黒く焼け焦げた色。木製の二階建ての家屋がまるまる一つ火災に遭い、全焼したのだ。すっかり日も落ちて夕焼けが消えかかって暗くなり始めた頃、消火活動も完全に終わって焦げ臭さと炭の匂いだけが残っている現場に降りる帳がチュウカのテリトリーを告げて、始まる。そう、夜こそがこの黒き暗い夜こそがチュウカの時間だった。そしてチュウカはその時に焼けた家屋を眺めていた。背中に偽中華包丁を提げて。焼けた建物をただ、じっと。
チュウカがクロと呼ばれていたのは遥か昔のことのように思えたが、しかしさほど時間自体は経っていなかったかもしれなかった。クロネコと呼ばれていたから略してクロ。猫と呼ばれていたのはいつも放浪としていていつも独りでいたから。薄汚れていて黒っぽかったのもあるかもしれない。
これは師匠のジロに仕えていた、チュウカの名前になる前、クロと呼ばれていた修行中に起きたある小さな出来事である。
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