第17話 夢想の福音

十字架型複合兵装クロイツ・クリンゲ、展開! モードチェンジ!」


 ハリスがエヴァンゲリウムを駆り、十字架型複合兵装クロイツ・クリンゲを変形させていく。加速しながら、回転しエネルギー状の剣を生成しそのままの勢いで、刃をグシオンの障壁バリアにぶつける。

 ……ハナの解析結果を踏まえて、エネルギーに特殊なを施した刃を。

 障壁バリアが破れる。それを好機と捉えたハリスは、そのまま刃をグシオンの首元に振り降ろす。


(くっ! 入りはしましたが……硬い!)


 十字架型複合兵装クロイツ・クリンゲの出力を上げ、エネルギーを増幅させる。だが、グシオンは己の首をさせ始めた。斬れるかどうかの勝負に終止符を打ったのは、救助を終え、合体したシュッツ・エンゲルだった。


『隊長! 援護に入りますぜ! 十字架小型兵装フライハイト・クロイツ展開!』


 デューイとハナの乗るシュッツ・エンゲルが、展開しエネルギー砲を放つ。上乗せされた追加攻撃により、ようやくグシオンの首を斬り落とした。青い体液が吹き出しながら、塵となって行く。


「ようやく、終わりましたか……」


 ハリスが一息ついた時に、通信が入る。レインからだ。


『ハリス、そしてハナちゃんとデューイ君。おつかれー! 早速だけれど、採取したデータの転送を頼むよ~?』


「分かっていますよ、レイン。それだけですか?」


『流石ハリス! これだけじゃあないさ!』


 レインから、追加任務の詳細が送られて来たのを確認し、ハリスはシュッツ・エンゲルに乗る二人と共に格納庫へ帰還する。すぐに整備班が来て、機体のチェック等を行う。その間に、ハリス達は機体から降りて集合する。

 そうして、集まった三人の元へ通信が別に入った。

 特殊部隊の基地の司令、アラスターからだ。ハリスが代表して、応対する。


「アラスター司令、そちらの状況はいかがでしょうか?」


『ハリストフォル・ハクルート大尉、基地の司令として感謝する。基地の被害は甚大だが、人的被害は最小限で済んだ。今は、正規のアルプ機関員達が処置している所だ』


「状況把握致しました。これより、そちらと合流させて頂き……コールフィールド姉妹の資料を頂けませんか?」


『そう来ると思って、既に資料は用意している。我々の方でも、調査を行う予定だ』


「承知致しました」


 やり取りを終えると、通信を切る。そして、三人はパイロットスーツから……トロイメライ戦隊の隊服に着替えてオーストラリア特殊部隊の基地司令室へ向かうのだった。


(しかし……今まで疑似怪獣ハイ・カタストロイとなった者に感化されるように、変異する者達は出ていませんでした。これは未知なる現象です。解析を急がなければなりませんね)

 

 ハリスは一瞬振り返り、自身の機体――トロイメライ・エヴァンゲリウムに視線を向ける。


(福音が来ると良いのですがね……)

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