第16話 奥の手は届き……

(さて。レインの奥の手が届くまで、どう致しましょうかね?)


 こうしている間にも、小型の疑似怪獣ハイ・カタストロイとなった者達に襲撃されている上、グシオンからの攻撃も止まないままだ。凌いでいられるのも、時間の問題だろう。


(時間稼ぎにしかなりませんが……やらないよりはマシですね)


「デューイ少尉、ハナ少尉。こちらも障壁バリアを張りましょう」


『えっ!? ですがあれはこのだけでは!!』


 声をあげるデューイに対し、ハリスは冷静だ。いつも通りの口調で返す。


「凌ぐ事が最優先です!」


『りょ、了解ですぜ! 隊長! ハナ、やるぞ!』


『わかったわ、デューイ! シュッツ・エンゲル、エネルギー置換! 障壁バリアモードへ移行します!』


 シュッツ・エンゲルの持つ十字架小型兵装フライハイト・クロイツの周囲に、障壁バリアが生成される。それをデューイとハナ、二人の操作でされた。シュッツ・エンゲルとエヴァンゲリウムの周囲を守るように展開された障壁バリア。その効果により、一時的ではあるが小型の疑似怪獣ハイ・カタストロイとグシオンの攻撃を防げるようにはなった。

 その間に、ハリスが座標を指定しレインの手札を待つ。


「到着まであと三十秒ですか。ほぼ賭けですね……」


『その賭けだけど~! 成功率高いよぉ! はい、到着ー!』


 レインの楽しげな声が通信越しに響く。到着したのは、純白の棺だった。エヴァンゲリウムは棺に触れると、起動させる。


「行きますよ! ベフライウング=シャイン!」


 純白の棺から光が放射され、見る見るうちに小型の疑似怪獣ハイ・カタストロイとなっていた隊員達が元の姿……人へ戻って行く。もっとも全員意識がないのか、次々と倒れて行くが。

 その様子を確認したハリスは、シュッツ・エンゲルに通信を入れる。


「お二人は、彼らの保護を! 僕がグシオンと対峙している間に早く!」


『了解ですぁ隊長! ハナ、解析データを隊長に!』


『ハリス隊長に送りました! 我々はして保護にあたります!』


 シュッツ・エンゲルが二機に分離する。上半身がデューイ、下半身がハナが搭乗している。その状態で変形し、飛行モードになった二機は次々と隊員達を救護して行く。その間にも、グシオンとハリスの駆るエヴァンゲリウムは対峙していた。

 互いにけん制し合う。


(時間稼ぎをするには、かなりキツくなって来ましたね……そろそろを起動させますか)


 ハリスがコンソールを操作し、呼び出すのは十字架型複合兵装クロイツ・クリンゲだ。座標を指定するとグシオンの攻撃を避け、かわしながら到着を待つ。空から降りて来た十字架型複合兵装クロイツ・クリンゲを手に持つと、素早く動く。

 ――標的ターゲットに向かって……。

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