五分で終わる短編小説集
kubuti
約束の花
主人公の玲子は、都会の忙しい生活に疲れ果て、田舎の古びた家に移り住むことにした。そこで彼女は、庭で美しく咲く一輪の花に出会った。その花は不思議な力を持っているようで、玲子が触れるたびに心が穏やかになるのだった。
ある日、玲子はその花に触れながら、ふと母親との思い出を思い出した。母親は玲子が幼い頃に他界し、その悲しみから玲子はずっと逃れられずにいた。しかし、その花に触れていると、まるで母親がそばにいるかのような感覚に包まれた。
不思議に思った玲子は、花について調べ始めた。村の古老たちに話を聞くと、その花は「約束の花」と呼ばれ、大切な人との再会を約束するという言い伝えがあることを知った。玲子は心の中で母親に再会したいと強く願い、その花に毎日話しかけるようになった。
ある夜、玲子は不思議な夢を見た。夢の中で彼女は美しい庭園に立っており、そこには母親が微笑みながら立っていた。母親は優しく手を差し伸べ、玲子を抱きしめた。「玲子、あなたのことをいつも見守っているわ。強く生きて、幸せになってね。」
玲子は目覚めた後もその感覚が鮮明に残り、涙が止まらなかった。花の力で母親と再会できたと感じた玲子は、その日から生きる力を取り戻し、新たな気持ちで日々を過ごすようになった。
数ヶ月が過ぎ、玲子は村での生活にすっかり馴染んでいた。ある日、庭で花に水をやっていると、見知らぬ青年が声をかけてきた。「こんにちは、その花、僕のおばあちゃんが植えたものなんです。」
青年の名前は悠斗と言い、彼も都会の生活に疲れて村に帰ってきたという。玲子と悠斗はすぐに打ち解け、花を通じて深い絆を育んでいった。二人は互いの悩みや夢を語り合い、次第に恋に落ちていった。
ある日、玲子と悠斗は約束の花の前で未来を誓い合った。「この花が繋いでくれた奇跡を大切にしよう」と。
だが、物語はここで終わらなかった。玲子が花に感謝の気持ちを込めて話しかけると、花がふっと輝き出した。そしてその瞬間、玲子の前に母親が再び現れた。母親は玲子に微笑みかけ、そして言った。「玲子、あなたが幸せになることが私の願いだったの。でも、この花にはもう一つの秘密があるの。」
玲子は驚きながらも母親の言葉を待った。「この花は大切な人を引き寄せるだけでなく、その人を試すの。あなたが本当に幸せになるためにね。」
玲子は涙を浮かべながらも微笑んだ。「お母さん、ありがとう。私は大丈夫。悠斗と一緒に幸せになります。」
母親は頷き、そして再び光の中へと消えていった。玲子はその光景を見つめながら、花に感謝の言葉をささげた。そして悠斗と共に、新たな未来へと歩み出した。
しかし、最後に玲子は気づいた。母親が消えた後、花もまた静かに枯れていたのだ。まるでその役目を終えたかのように。それでも、玲子の心には確かな希望と幸福が残っていた。そして彼女は、その花が与えてくれた奇跡を胸に抱きながら、これからの人生を歩んでいった。
end
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