エピローグ 花畑が綺麗な病室で

【数年後、花畑の綺麗な気持ちの良い場所】


?「国見のおじさん!」

「ゆ…優くんか!?」


それは偶然の再会…神様の気まぐれ。


もうすぐ小学三年生という優くんは「そりゃ『鶴姫』とまで言われた速見先輩の血を半分継げば、これくらいにはなるよね」と言う器量の良さを身に纏いつつ、お供に小学一年生?もう少し下くらいの綺麗な女の子をお供に、ニコニコと駆け寄ってきた。


?「だ、駄目だよお兄!知らないおじさんに話しかけちゃ」

優「大丈夫だよみっちゃん!知ってる人~」


みっちゃん…みっちゃんか…懐かしいけど心にズキンと来る愛称だ。もう会えないと…話すことも出来ないと思っていた人の愛称と一緒…少なくとも昨日までは。


優「僕たち学童保育の遠足で来てるんだ~、おじさんはどこに行くの?」

「ん~、おじさんは病院」


病院と聞いて優くんの顔が曇る。…優しい子だ。


優「どなたかご病気なの?」

「香緒里がね。でも…もうすぐ退院なんだ」

優「香緒里ちゃんがいるの!?」

「ああ!」



色んなことが変わった。香緒里の病状は一進一退だったけど比較的病状の良い時に香緒里と話して、俺は田仲に事の顛末を話した。もちろん俺が香緒里と身体の関係を持ってしまったことも。


結果、田仲と香緒里は離婚することになった。


「三月さんとの身体の関係は良くても、俺は絶対駄目って…まあ田仲の気持ちもわからないではないか…」


離婚条件でふっかけられるのも覚悟していたが、香緒里が病院から離れられない状況だったのを受けて条件はほとんど付かなかった。こちらの有責がはっきりすれば良いとのことで二人合わせて50万円の慰謝料の支払いで終わった。


田仲「なあ達也…俺たちどうすれば良かったんだろうな。俺どこで間違えたんだろう。俺…香緒里と穏やかに暮らしていければ…良かったはずなのに!」


これが田仲の最後の言葉。

…あれから田仲とは会っていない。



香緒里は今の病院に転院した。

春の空気が清々しい花畑が綺麗な場所。

皮肉にも田仲との離婚で、香緒里の容態は好転に向かった。


香緒里「三月さんに…もういっそ達也と付き合ったら良いんだよって…言われていたんだ…」


でも、三月さんの許可が無いからって、俺には決して身体を許すことは無くて。

俺は、一年以上の間、一時間半ほど掛けて、探偵事務所と病院を往復している。



優「香緒里ちゃんに会いたいな!」

?「お兄!!」


美人ちゃんが慌てて引率の先生を呼んできた。

俺は先生に優くんとの関係を説明した…だけどまあ…分かっては貰えないよな…と思った瞬間だった!


優「もしもし~パパ?」(電話)


止める間も無く…ずっと望んでいた恐怖の瞬間が…突然やってきたんだ。



三月「達也?」(電話)

「三月さん」

三月「元気か?」(電話)

「三月さん!!(涙)」

三月「なんだよ~泣くなよ~」(電話)

「三月さん、ごめんなさい…ごめんなさい」


三月「あ~もう!優に戻せ!」(電話)

「三月さん…」

三月「これも運命の神様の思し召しかもな」



【外の花畑が綺麗な病室】


香緒里「優くん!?優くんなの!?」

優「香緒里ちゃん~」

香緒里「優くん!!」

優くんは美人ちゃんをお供に、早速香緒里の病室を訪ねてくれた(三月さんが電話で引率の先生を説得してくれた)。


優「香緒里ちゃん!顔色悪い~!寝てばっかいないで、ちゃんと外で遊ばないと駄目だよ~」

香緒里「優くん…うん!早く退院して外で遊ぶ!」

優「絶対だよ~」


香緒里ちゃんの泣き笑い。あんな嬉しそうな香緒里ちゃんは本当に本当に久しぶり…


香緒里「うしろのお供さんは妹さん?」

そう言えば…速見先輩、いつの間に!?


優「ううん?こいつは最近出来た僕の子分!」

美人ちゃん「そう!お兄の子分!!だからお兄はあたしのもの!」

優「なんで親分が子分のものなんだよ!」

美人ちゃん「良いの!お兄は黙ってあたしのものになりなさい!」

優「香緒里ちゃん、こいつキモい!!」

香緒里「あはは!!」


美人ちゃんが顔真っ赤にして怒っている。ちびっこの恋だけど、こりゃ優くんに惚れてるんだな。…親子して本当に強烈な血統だよ。


香緒里「優くん…お願いがあるんだ。良いかな?」

優「な~に?」

香緒里「優くんのパパに…優くんのパパとママに伝言して欲しいんだ。ごめんなさいって」


優「許すって」


香緒里「え?」

「え?」

優「香緒里ちゃんが謝ってきたら伝えなさいって、パパが」

香緒里「あ…あ!」


優「まだあるんだよ?え~とね、たつやにみもこころもしあわせにしてもらいなさい、って…合ってるかな…難しいや~」

香緒里「~~~!~~~!」

優「香緒里ちゃん泣いちゃ駄目~パパのバカ~」

香緒里「違うよ!違うよ優くん…ありがとう三月さん(涙)」



それから…香緒里ちゃんは、本当に…本当に急速に回復した。

そして我が国見達也探偵事務所には…また敏腕の事務員さんが帰ってきた…俺の生涯の伴侶として。


俺たちはやっと…やっと…ささやかな幸せの第一歩を迎えることが出来たんだ。



【エピローグのエピローグ】

【某日 国見達也探偵事務所】


香緒里「ところでさ、「みっちゃん」って結局、幼馴染み?妹さんじゃないんでしょ?」


あれから数年が過ぎた。優くんは時々、事務所に遊びにくる。優くんの来訪は、私とたっちゃんにとっては幸せの象徴!いつでも大歓迎。

この日は珍しく、美人ちゃんの「みっちゃん」も一緒だったんだ。


優「え~、みっちゃんは妹だよ。血の繋がった」

香緒里「そうなの!?」

美人ちゃん「香緒里お姉ちゃん違うよ!あたしとお兄は戸籍上は一切の繋がりが無いんです!だからあたしはお兄と結婚するの!」

「血が繋がってるのに、戸籍上は他人なの?どういうこっちゃ?」

優「一緒に住んでるんだけどね…名字も違うの」

香緒里「え~と、みっちゃんは桂木じゃないのね?」


はい!と元気良く美人ちゃん、


「私の名前は『三里亜みりあ』!秋山三里亜で~す!!」


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