第6話:【急募】ミステリアスってどこですか?

Reader-主人公


「して、その幻想少女……いや、

時計弄りの白クロノ・ホワイト』だったか? 新たなS級殲滅者スレイヤーは一瞬にして姿を消した。君の部隊の証言によると、その姿が量産型幻想少女:Licaシリーズに酷似していた」


クロノに助けられ本部に戻った後、俺は総指揮官の部屋に呼び出されていた。


「はい、違う点はいくつかありましたが、あれは確実にLicaでした。過去に役目を終えた子などの確認は行っているのでしょうか?」

「あぁ、過去にされたものに関しては現在調査中だ。もっとも、Licaシリーズは量産型の中でも最古参、古いものだと100年前に誕生したものも現役で活動している。無駄骨に終わるだろうな」


処分、という言葉に、手の皮が白くなるほど固く結んでしまう。


「それで、クロノについて教えてくれるか?」

「はい。大部分はLicaとなんら変わりはありませんが、指先まで隠れるほどの黒いロングコートにズボン、紫色の目、左目に眼帯、喫煙者。そして……気怠げそうなと、対象を殲滅する際はとてもを。俺たちに対して、笑いかけるなど、感情があるようでした」

「それは……


俺に届かないように細心の注意を払った呟きが、当人の思惑に逆らって俺の耳に入る。


「ありえない、とはどういうことでしょうか」

「! ……なんのことだ?」

「いえ、いま……なんでもありません」


これ以上追求するな、と言わんばかりの視線に刺され、そのまま話を中断させてしまう。


「最近、頭を悩ませる状況ばかりだ。ご苦労だったな、しばし休暇を楽しんだのち、新たな任務を与える」

「はっ、失礼します」


総指揮官に促され、この場から退室する。


「どうでしたぁ?」


入り口で待機していたブルースが声をかけてくる。


「緊張したよ。あの人を見たのは入軍式の舞台挨拶をされているのを見たくらいだから、まさか会話をする機会があるとは思わなかった」

「それだけ私たちが立派に任務を果たした、ということですぅ。幸いにもスカレットちゃんとイエルロちゃんもスペアを使わずに修復を終えたようですし」

「それはよかった。……でも、俺の力で得た結果じゃない」

「イレギュラーはありましたけどぉ、クロノ・ホワイトが到着するまで時間を稼いだのは指揮官のお手柄ですぅ。誇っていいですよぉ」

「ありがとう、そう言ってもらえるとうれしいよ」


笑いかけると、俺の周りでぴょんぴょん飛び跳ねながら、何かをしようと模索し出したブルース。


「むぅ、ちょっとしゃがんでください!」

「ぅ、うん」


彼女の鳩尾の高さまでしゃがみ込むと、ポスっと頭に何かをのせられる感覚があった。


「よしよし、頑張りましたねぇ」


どうやら、足りない身長でどうにか頭を撫でようとしてくれていたらしい。仲間の温かさを感じながら、総指揮官の部屋の前でやることじゃないなと思い立ち上がる。


「もうちょっと撫でられてもいいんですよ?」

「ありがたいけど、また今度」

「そうですかぁ。それにしてもクロノ・ホワイトって誰なんでしょうか?」

「本当にね……クロノ・ホワイト、何者なんだ……」


醸し出すミステリアスな空気感を思い出しながら、指揮官室へと帰路に立つ。





一方その頃、俺はというと……………






「あ゛っっっっっぢぃぃぃいぃぃ……………」


隠れ家であるDr.Fの研究所で、先ほどの内容を盗聴しながら扇風機の前であぐらをかき、頭に氷嚢、長い髪は後頭部でひとつ結びに。タンクトップとトランクスを身にまとい煙草を咥えているという、ミステリアスさのカケラも無い姿で必死に暑さと戦っていた。いや、正しくはと言った方が合っているか。


「『超越加速タキオン』はポンポン使うもんじゃねぇなぁ」


簡単に言えば、OYSのデメリットによる思考回路の異常暴熱オーバーヒートだ。その熱で体調調節機能がイカれて現在修復中、原因となっている頭部を冷やしながら、身体中からほと走る熱を必死になだめていた。


「オーバーヒートってこんなに辛いんだなぁ」


例えるのであれば、熱風邪にうかされているような感覚だろうか。思考回路がやられているせいで考えにもやがかかり上手くまとまらず、常に身体中がだるい。ごめんね前世のタワーパソコンくん、こんなに苦しかったなんて思いもしなかったよ。マ◯クラのTTで27時間放置とかやっちゃってごめん。旧アイアンタイタン作ってごめん。


「んー、盗聴器も十分動作してることを確認したし、今のうちにやること整理しとくかぁ」


ちな、盗聴器はタキオンの時に背後に回って埋め込ませてもらったよ。今なら衛星GPSもついてくる、お得だネ!


一旦思考をリセットするかのように、肺に取り入れた紫煙を扇風機に向かって吐き出す。風に押されて顔に直撃、思いっきり目にダイレクトアタックを喰らい天井を見上げながら苦しみ呻く。バカだろ俺、いやこれは攻撃に使えるか?


閑話休題、ところどころずさんでも、考えた結果が残っていればいくらでも再設計可能だ。


「まずは武器の確保だな」


前回使ったKATANAは、その辺にあった鉄板を研究所の設備で突貫加工した雑もいいところの品物。案の定タキオンに耐えられずに⭐︎粉⭐︎砕⭐︎したよね。


「俺が昔使ってた『クレシューズ』と『パイルバンカー』がありゃあなぁ……」


懐かしの武器たちに思いをはせながら、他にやるべきことをまとめる。その中の一つに、


「どうしても、一回主人公くんの前に現れる必要があるな」


キャラクター的にも、物語の進行的にも。


「エレベーターは復旧させて、隠れ家の中にあった『光学的透過布カメレオン』で偽装もした。武器の類は……主人公くんに頼めば『クレシューズ』…‥とまでは行かずとも、ファントムソードくらいはなんとかなるだろ」


症状が落ち着き次第、地底都市パラディーゾに潜入開始、(´∀`)ノシ


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A37に質問


Q:タンクトップとトランクスはどこで手に入れたのですか?

A:その辺のロッカーにあったもんを奪った。この研究所にはDr.Fを除いて男はいなかったらしいし、博士んもんなんじゃね? 知らんけど。


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Lucaシリーズの製造年代


Licaシリーズの最も古いA01は、約110年前にDr.フォードボルトによって製造され、プロメテスインダストリーに製造法を委託されたことが資料に残っている。No.AからBに移るまで20年近いラグがある。

現存して稼働中の幻想少女の中でもっとも古いのはLica-A03であり、オリジナルとして最古のオルターとは11年の差がある。

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