良夫さんのマッチングアプリ

寅次郎

第1話



この日も家にいた。




市松良夫55歳。




良夫の記憶が正しければ、最後に彼女がいたのは33歳の時。


という事は22年間彼女がいない事になる。


良夫の母は「孫の顔が見たいわ」と言いながら3年前に病気で死んだ。


母ちゃんごめん。


親不孝したと思ってる。


そんで今日は土曜日だ。


古い友達のシゲと飲む約束をしている。


良夫は最低限のお洒落をしてシゲの待つ居酒屋へ向かった。










居酒屋へいくとシゲが手を振った。


シゲの座る席へ行く。


シゲが言う




「なんとかやってるのか?」




「ああ、なんとか」




「良夫、女でも作ったらどうだ?」




「この歳で出会いなんかあるかよー」




「今、マッチングアプリってのがあるんだよ。それで俺3人と会ったぜ!」




良夫はマッチングアプリはなんとなく知ってたけど、こんな近くでやってる人を初めて見た。




「意外と若い女の子とも知り合えるんだよ」




「でも会話が続かないだろ。それにシゲ嫁さんいるじゃないか」




「嫁の事はいいんだよ。会話なんてアドリブだよ!」




「どうせサクラばっかりだろ?」




「だから言ったぜ、俺3人と会ったって」












良夫は半信半疑で言われるがままに、そのシゲが言うマッチングアプリに登録してみた。


なんだか、良夫は自分のプロフィール見た女の子が「キモイ」「ジジイ」


などと言われてる所を想像してしまった。


早速メールが入った。


シゲ曰く登録してすぐのメールと、下ネタで誘ってくるメールはサクラだと教えてくれた。








登録もしたことだし、シゲと明日も会おうとなって別れた。


良夫は自分の知らない所で時代は進んでいるんだな、と思わされた。


お見合いなんて今の時代する人いないんじゃないか?とさえ思った。


登録してからずっと下ネタ系のサクラばっかりメールが入る。


瓶ビールを飲んでこの日は寝た。














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