無限ループのはてで私たちは

村田鉄則

ブログに残された遺書

 無題


 NEW!2024-06-17 23:33:31

 テーマ:日記


 頭蓋骨の割れる音がした。

 生まれて初めて聞く音ではあったが、直感でそれは頭蓋骨の割れる音だと理解した。

 電動キックボードのデッキ部分が、獲物を発見し追いかけてくる獰猛な獣のような勢いで、彼女の頭を襲ったのだ。


 彼女はその場で転倒。

 素人目でもわかった。

 彼女はもう助からないと。


 電動キックボードに乗っていた人物はその場で逃走。

 友人の死を間近で見た…気が動転していた私はキックボードに付いたナンバープレートを見ることを忘れていた。


 倒れた彼女を見下ろし、立ち竦む私を一瞥して、犯人はキックボードに再び乗り、逃亡した。視野の端にいてよく見えなかったが、何かを拾うような動作をしていた。おそらくではあるが、スマホを見ながら、所謂ながら運転をしていたのだろう。


 数分後、辺りを通りかかった軽トラの運転手が私たちに気づき、救急車を呼んだ。


 事故現場は車通りの少ない田舎道で、

 私以外に目撃者はいなかったはずだ。

 勿論、防犯カメラなんて無いだろう。


 なぜ推量的な口調かとこの手紙を読んだあなたは、お思いかもしれない。


 それは簡単なことである。


 これは私の遺書だ。


 私は友人、いや少なくとも私はそれ以上の想いを抱いていた相手、彼女を事故で今回亡くしたのだ。


 彼女の死後、私の脳内におりのように、よどみ始めた絶望の感情を思い浮かべてみて欲しい。あなたにも大切な人が居るだろう。その大切な人が死んだとき、どういった行動をあなたは取るだろうか?


 私は、私は、私は…


 絶望の淵に立った私は死を選ぶしか選択肢が浮かばなかったのだ。




 

 





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