未来が分かるチートな日記を手に入れた〜だけど悲惨な未来が降り注ぐので、タイムリープで全力回避しようと思います!〜

カツラノエース

第1話【冒険の始まりだぞ】


「――では、これにて冒険者登録は完了となります。最後に、重要な部分のみを再確認いたしますね。」

「あぁ、頼む」

「名前はハヤト・クレプスキュール。等級は最下級の初級下位。仲間はまだ見つかっていない。――お間違いはないですか?」

「うむ、完璧だ。」

「では!貴方の冒険者ライフが少しでも良くなる事を祈っております!!」


 こうして俺――ハヤト・クレプスキュールは冒険者試験を見事合格し、晴れて冒険者になった。

 ――っと、まずは自己紹介からした方が良いか。


 改めて、俺はハヤトだ。歳は18。好きな物は特に無いが、昔から今は亡き冒険者の父に憧れ、木の棒の素振りをしたり、魔法の基礎勉強をしたりはしていた。

 そう、小さな頃から冒険者として色々な仲間と輝いている姿に俺はとても憧れていたのだ。


 決してドラゴンを倒したり、魔王に挑んだりする英雄では無くとも――街のひとりひとりの幸せを守る。それってすごく良い事だと思わないか?

 ――だからこうして同じ立場に立てて、今すごく嬉しい……!!


 高望みはしない、これから俺は色々な人間と出会い、成長して行き幸せな冒険者ライフを過ごすんだ……!!



「っはぁーーっ!!」


 冒険者ギルドから出た俺は早々に両手を伸ばしあくびをする。

 よしっ!!じゃあまずは冒険者の時に使う武器相棒を買いに行くとするか。


 そう、まだ俺は自分の武器は持っていない。

 冒険者になる際、試験官との手合わせや魔法のレベルテストなどがあるのだが、その時に使用する防具や武器も貸し出しの物だしな。


 それに何と言っても!!今居るこの街――フレイラは冒険者の数が年々減って来ているらしく、今年から冒険者は防具や武器の値段が半額で買えるようになったらしい!!

 特別裕福な家庭じゃない俺にとって、これはものすごくありがたいのだ!!


「では、武器屋へ行こう!!」


 こうして俺は鼻歌混じりに首に下げた【初級】を意味する銅のネックレスを揺らしながら武器屋の方へ歩いて行った。


 ♦♦♦♦♦


「おっ、クレプスキュールんとこのガキじゃねぇか!!久しぶりだな!!」


 その後、俺は冒険者ギルドのすぐ近くにあるフレイラにひとつだけの武器屋に入る。

 すると、早々に奥で売り物の剣を布で拭いていた筋肉隆々のスキンヘッド男がそう片手を上げて挨拶をしてきた。


「あ、あぁ。相変わらず元気だなギルさんは。」

「なに、俺はいつまでも元気だぜ!!ツバメ――じゃなくてお前の親父から頼まれたからな!!フレイラをいつまでも守ってくれと。」


 この人はギルさん。――俺が子供の頃からずっとこの店の店長をしている人だ。

 そして、一瞬出てきたツバメというのが父の名前だったりする。(2人は酒を一緒に飲む仲だったらしい)


 それで、昔から父に連れられてこの武器屋によく来ていたから、ギルさんにも覚えられている。

 ――まぁ、父が死んでから数年間、来なかったが。


 だから、当然俺が冒険者になったという事情を知らないギルさんはこう尋ねて来た。


「で、今日はどんな用で来たんだ?」

「実は俺、今日冒険者になってな、」


 そうして首にぶら下げた銅の板が付いたネックレスを見せる。


「お!?おぉ!!お前も冒険者になったのか!!だから、武器を買いに来たって訳か!?!?」

「うぅ、ギルさん顔が近いぞ、、まぁそうだが」


 鼻息を荒くして近づいてくるギルさんを俺は両手で押し返す。


「まぁ!!好きなだけ見てってくれよ!!」

「あ、あぁ。そうさせてもらう」


 

 そうして俺は自分が買う武器を探し始めた。

 ――っと、じゃあここで一応この世界の通貨「ゴールド」の説明をしよう。


 まず、この世界の通貨ゴールドには3つの種類がある。

 銅貨、銀貨、金貨の3つだ。そして価値はそれぞれ1、10、100と銅から金にかけて上がって行く。

 今持っているのは銀貨3枚だから30ゴールドだな。(武器は大体平均して20ゴールドくらいだ。)


「お、この剣良いじゃないか」


 そこで店内を物色していた俺はひとつの剣が目に止まった。

 通常の剣と比べると刀身が少し長めの物だ。


「やっぱりそいつが目に付くか」


 すると、それを見たギルさんはまるで最初から俺がそれを選ぶと見透かしていたかの様にそう言ってきた。


「なぜ分かっていた様な言い方をするんだ?」

「だってそれは――お前の親父が使っていた物と同じタイプの剣だからな。」

「……ッ!!そうなのか、」

「あぁ、どうする?それにするか?」


 値段も25ゴールド。うん、平均よりは少し上かもしれないが、それでも予算範囲内だ。


「あぁ、これにするぞ」

「お、分かった。他の物は見ないのか?」

「他?」

「ポーションや魔法関係の本などウチは色々置いてるぞ」


 魔法関係の本――か。

 確かに俺はそれほど魔法を使うのが得意という訳では無いし、買っておいて損は無いかもな。

 (予算に収まれば、だが)


「じゃあ、少し」

「おう!ゆっくりしてけ!」


 そうして魔法関係の本が置いてあるエリアもついでに見ることになった。――――のだが、


「ん?なんだこの本」


 魔法関係の本を選び始めて数分後、俺は1冊の本を見つけた。

 普通の本よりも分厚く、カバーは相当古いのか赤色が薄れてきており――表紙には金色の文字で「デスティニーレコード」と書かれている。


「デスティニーレコード?なんだこの本」


 普通、この様なよく分からない物に興味は移らないのだが、なぜかこの時俺は無意識にこの本が欲しくて仕方なくなっていた。


 すると、その様子に気が付いたギルさんが声をかけてくる。


「お、お前それ欲しいのか?」

「ふぇっ!?い、いや、なんか気になってな」

「……別にそれならタダでやるぞ」

「――へ?な、なんでだ!」


「いや、俺もいつからそれがあったのか分からなくてな。そこまで古い本だとさすがに買い手も付かないだろうし。良いぞ別に。」

「な、ならっ!!――――」



 そうして俺はこの本「デスティニーレコード」を手にする。

 思えばこの時からだ。人生の歯車が段々と狂いだしたのは。

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