第1話 まじでお前誰だよ!!!

「ねーねー紬ちゃーん?今日みんなでカラオケ行くんだけど一緒に行こーよぉー?」

現在読書中なのをお構いなしに邪魔してくるのは幼馴染の圭介だ。高校に入っても陽キャオーラをだしまくっているせいか、横にはいつ見ても女子がくっついている。

「お前には女子がいんだろーほら、カラオケ行くなら行けよー」 

ほれほれ散った散った的な感じで手を振る。 

「そんなぁ〜紬ちゃーん〜!あっちょっと〜!紬ちゃん連れて行くんじゃぁぁぁぁぁ―」

しびれを切らした女子が無言で圭介を引きずりながら教室を出た。もう一人の女子もまたね。と言い残して教室をあとにした。


はぁ…うるさいのがいなくなったからか急に静かになったな…。


まぁ読書には最適だからいいんだけど。


俺はまた本を開いて読み始めた。


それから十分ぐらいだろうか。廊下からものすごい音が聞こえて俺は教室のドアから顔を出した。


「せぇぇぇぇぇんんんんんぱぁぁぁぁぁぁぁぁい!」


なんということだろう…あんなデカい足音…え…?

先輩…って…おれぇ?!


自教室には誰もいないし……他クラスにも誰も残ってるやつはいなさそう…ってことは確実に俺…狙われてね??!


これが大昔から培われてきた本能ってやつなんだろうか。

ありがとう…ご先祖様…


俺は急いで教室を出て走った。あ、もちろんご先祖様には泣きながら感謝した。


「待ってくださいよ〜!!せんぱぁぁぁぁい!」


「ちょっ…!!一回止まれって…!!な!?」


おまえが止まれよ。

と思ったそこのあなた。

今の俺の状況は簡単に言うと猫とネズミだ。もちろん俺がネズミな?

止まったら最後…あの爆速で走ってくる後輩(赤の他人)に食われるだろう。


ハァッ…ハァ…ハァッ…


なんっっっっとか逃げ切ったぞ…多分これリレーで一番取るより嬉しいやつだ。


あいつほんと何なんだよ…俺がフル無視で本読み続けてたら終わってたぞ。(色んな意味で)


女子ってみんなあんななのか…?(女経験0)

圭介…やっぱおまえすげぇよ。



落ち着いたところで、状況を整理しよう。

今、俺は校舎の2階の教室から裏庭まで来た。

え?裏庭?

50メートル走でバテる俺が?ここまでほぼ全力疾走で?

これが火事場の馬鹿力ってやつなのか…なるほどな。勉強になった。

心のなかで自分に拍手していると―


カサカサッ―


?!

今…そこの草揺れたよな…見間違いじゃ…ないよな?

俺は恐る恐る近づくと


「せんぱいっっ!!!」


人が飛び出してきた。


「うわぁぁぁぁ!」


俺は地面に倒れ後退りする。


「ちょっっっとタンマ!」


俺はちょっと考える時間が欲しかった。今のこのわけわからん状況を―


「せんぱい!」


後退りで離れた距離を詰め、食い入るように一人の女子が見つめてくる。


「わたし、先輩のことが好きなんです!」

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