革命の旅路:〝エピソードZEROs〟

ミルク・ルピア/Milk.Lupia

地球の世界での別れ

プロローグ・地球:前編

 こちら、現在書いている『革命の旅路』の前日譚的なものです。

 設定をしっかりと組み上げる為に書きます。

 興味を持ったかたは、どうかこちらの方だけでも読みきって下さい。

 七月中には書き切ります。



 とある一人の少年がいる。

 隆々としているわけでも、怠けているわけでもなく、健康的で整った体型。背丈はおおよそ170。

 髪はオールバック、あるいはアップのスタイルで、染めたわけではないが真っ白だ。

 涙ボクロがありつつ、鋭くも落ち着いた目をしている。

https://kakuyomu.jp/users/milklupia/news/16818093079667760406

 いつも通り学校に向かう途中、前方に一人の女性がいた。知っている顔だ。


「アイツ……」


 赤信号の横断歩道で、空虚な表情で立ち尽くしている。

 すると、右側からトラックが走ってくる。

 彼女は彼の方をチラッと見て、もう一度前を見る。

 トラックは自らの方は青信号なので、止まる気配はない。


「クッソが……!!」


 彼は察して走った。

 は的中し、彼女は一歩進もうとした。

 彼は駆け出し、彼女のもとへ向かった。


「やめろオイ!!」

「あっ……」


 そして、彼はそのまま―――


「何してんだよ……」


 彼女のことを後ろから抱き締め、引き留めた。

 トラックは何事もなく、左方へ走り去っていった。


「ん……」


 彼女は抱き締める彼の腕を優しく握りつつ、自身の頬をそっと添える。


「ねぇねぇ、一緒に学校行こ。」

「それよりも、今なにしようとしたか言いなさい。」

「うん?何も~?」

「………あぁ、そうか。」


 彼は特に何かを言うわけでもなく、彼女の隣に立った。信号が青に変わると、互いの腕を絡ませ歩き始めた。

 ポケットに入れているスマホは、絶えず揺れている。



 彼らが学校に着く……より少し前の段階。校門には数名の女性が待っていた。

 彼が来たことに気づくと表情を大層明るくし、腕を組んでいる女性がいることに気づくと表情を滅法暗くした。


「おはよう。」

「おはようございます、先生。」

「先生じゃなくてね。それより不純異性交遊はやめよっか。」


 先生と呼ばれたるるという彼女は、彼と腕を組む女生徒を半ば強引に引き剥がした。

 その二人がそれを切欠に口論を始めた。

 一方で、彼はそれを止めるため声をかけようとする――が、他の女性たちが先に動いた。


「先行こぉ。」

「二人を止めた方が」

「へーきへーき。」

「ん……」


 その3人は彼を囲むように立ち、校舎へ向かうように促した。

 現在も彼のスマホは、絶えず着信している。



 教室に着いた。数名の生徒がいる。

 一人の男子生徒は、彼の方を見ると眉を上げた。しかし、3人の女性に囲まれているのを見ると、眉を落とした。

 彼は手をそっと上げ、喋りはせずとも仕草と表情で「おはよう」と示した。男子生徒はそれを見ると、また一度眉を上げた。


「よいしょ。」


 彼が自身の席に着くと、一人は隣の席に、もう一人は後ろの席に、そしてもう一人は彼の膝の上に座った。

 彼は決して文句はいわず、膝に座った女子を優しくそっと抱き寄せた。

 彼女は彼の左手を取り、自身の脚に挟んだ。さらに体重をかけて彼に寄りかかった。

 そして当然、スマホは受信を続けていた。



 しばらく経ち、人が増え始めた。皆同じく彼に挨拶する。

 ある者は笑顔でぱっと、ある者は自然にさらっと、ある者は周りにいる他者に苛立ちを感じつつもすっと、そしてまたある者はノータイムでハグを。

 またしばらく経ち、HRが始まった。


「さて、朝方私との会話をそっちのけで教室来た生徒がいた。あとで職員室に来るように。」

「開口それかよ。」


 絶えず揺れるスマホに意識を向けつつ、彼はついつい本音を声に出してしまった。



 数分ほどでHRが終わった。

 彼は通知の止まないスマホを手に取り、画面をフリックし出した。

 漸く、溜まり続けた受信を消化し始めた。


【帰り一緒!言質!】

【やっと既読着いた。】

【おーい。あれ?学校かな?】

【今晩は会えるの?】

【これ誰?】

【嘘つき。】

【週末どうかな?うんと弾むよ?】

【なぁ見ろこれw】

【2!いや3!どう?】

【今日の夕飯何がいい?】

【明日の放課後時間ありますか?】

【おはよー】


 友人、知人、家族に……その他諸々沢山の身内からの連絡が来ている。

 彼はそれらに一通り目を遠し、瞬時に優先順を決め返していく。

 その表情は、微笑むことはありつつも、険しい顔や真顔が基本だ。

 しかし、さらに新たに通知が来た。

 うち1つはこのようなものだった。


【悪ぃ、今日の夜会えたりする?無理ならいいんだけど、大学の連中がめんどーでよ】


 それを見た彼は、先ほどまでとは違い少し微笑んだ。


「没収でいいかな?」

「良くない。仕事しなさい先生。」


 多くの人に好かれる彼。

 大変華やか状況――


 ―――――否。

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