第18話 いやそっちかい!

「わー、とーきょーだー」


私たちは東京の新橋駅の近くの道路を車で走っていた。進吾は窓から見てるビル群に目を輝かせている。


「あ、きしゃがある」

「本当だ。ここあんま来ないから知らなかったな」

「パパはちゃんとまえみてうんてんして」

「はいすいません」


まさかの息子の方がしっかりしていた。それはそうと進吾の言っていたのはSL広場のことだろう。


「おっ、多分ここら辺だな。車止めに行くぞー」

近くにある駐車場へ向かった。



「おっ、あったあった。ここだー」


テレビで見た通りの景色、石の鳥居に灯籠が飾られた神社、物静かな場所に位置してあった。私たちは鳥居の前で一礼し、中に入っていった。


「ここががん封じで有名な神社か…後で御朱印もらっときたいな」

「またいってるー」


短い階段を登った先に拝殿が見えた。財布から小銭をいくつか取り出し、賽銭箱にそっと入れた。カランカランと落ちていく音を確認してから、2礼2拍手をし、願い事を心の中で祈った。そして1礼して、祈願は終わった。


「ママはなにをおいのりしたの?」

「そりゃ進吾のがんのことだよ。せっかくここまで来たんだし」


そのまま御守りと御朱印をもらうことにした。


「ぼくはやっぱこれがいい」


そう言って指を指したのはがん封じの御守りであった。


「好きなの選んで良いよ?私たちがこれ買っておくからさ」

「じゃあさっきのとこれにする」


進吾はストラップの心願成就御守りに決めた。カラスがあり、かわいらしいものだった。


「心願成就ってお願い事叶えるやつだよ?勉強とか健康じゃなくてもいいの?」

「やりたいことがぜんぶかなうようにもっておくの」

「ちゃんと考えてるなー進吾」


横で黙って選んでいた旦那が口を開いた。


「俺はこの仕事御守りにしようかな」

「めざせしゅっせ!」

「親の出世のこと考えるなー」


進吾の頭をワシャワシャとしながらも少し笑っていた。


「私はカラスの絵が描いてあるし、この開運の御守りにしよ」

「かわいいー」

「進吾とお揃いだねー」

「だねー」


各々選んだ御守りをしっかり買い、境内を散策していた。


「みこさんかわいかった」

「可愛いかったよねー」

「そうだ、最後におみくじだけ引いてこうよ」

「さんせーい」


どうやらここには超大吉というものがあるようだ。内心期待しつつ、3人分のおみくじを引き、一斉に結果を見せることにした。


「パパママいくよー?せーのっ!」


バッと開き、みんなの結果を見合わせる。


「せめてそこは凶であれ」


旦那がツッコんでいたので結果を見ると小吉であった。旦那には空気を読んでもらって、凶なのが一番面白かった。


「進吾はどうだった?」

「ぼくがきょうだったー」

「「いやそっちかい!」」


思わず2人同時にツッコんでしまう。だが、当の本人は凶でも全然嬉しそうだった。おみくじが引けて嬉しかったのだろうか。


「ママはー?」

「私?私はまあ……」


私が2人に見せたのは中吉だった。


「いや家族全員ビミョー」

「それなー。うんなさすぎ」


っと凶を引いたご本人がおっしゃっていた。


「また機会があったらリベンジしようね」

「つぎはだいきちー」

「そういや進吾、疲れてないか?」

「うんぜんぜんへーき」

「なら、さっき言ってた汽車見に行くか」

「いきたーい」


進吾は満足そうにし、私たちは進吾の後を追うようにして神社を後にした。


「はい、チーズ」

「いぇーい。きょうだぞー」


御守りとおみくじを持って記念写真を撮って、そのまま帰るのであった。

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