第6話 進歩

夏休みがそろそろ始まりそうな時期になる。そして今日は授業参観だ。そのため私と旦那は小学校の教室で数学の授業の様子を見ている。 


「はい!」


手を高く挙げ、元気な声を出す。


「はい、じゃあ三河くん。40-16をひっ算してみると答えは何になった?」

「24です!」

「正解。みんな拍手ー」


パチパチと子供たちや保護者、先生から拍手が上がる。息子は満足そうにしながらも、どこか照れていた。


「おぉ、やるじゃん進吾」


旦那も顔では出していなかったが、声がいつもよりも明るく、嬉しそうにしていた。やりたいことノートの達成ができ、私たち2人はホッと安心をした。そして授業を見ていると友達もいて、授業にも追いつけているので心の不安も晴れた気分だ。


「そういや廊下の掲示物見たか?」

「え?そういやまだ見てないかも」

「進吾、色々書いてたぞ」


そう言われたため、隙を見て廊下に行き、進吾の書いた物を探す。廊下には図工の時間に書いたであろう学校の絵、そして旦那が言ってたものが貼ってあった。


「あっ、あったあった。どれどれー?」


内容は"夏休みに楽しみなこと"について書いたものだった。縦書きで書かれていて、進吾が描いた絵とともに貼られていた。


たのしみなことは花火をみることです。大きいやつと小さいやつをみたいです。あとは川や海にもいきたいです。テレビでみたきれいなところにいきたいです。


私が特に驚いたのは漢字を書いていたことだ。"花火"や"川"、"海"など頑張って書いたことが分かる。少し前までは漢字はあまり書けなかったのだ。そしてそもそも進吾は漢字や国語が苦手だった。それが少しずつ進歩してきていた。


「そういや進吾は学校どんな感じで描いたんだろ…」


真ん中に大きく学校があり、左右には木が生えている。地面はグラウンドをイメージして描かれていた。

字も絵も1年前より読みやすく、きれいになっている。


「頑張ってるんだね」


一通り掲示物を確認した後、私はクラスに戻った。旦那も同じことを思ったのか、ニコリと笑いアイコンタクトをとった。この授業参観では、進吾の成長を感じた日だった。

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