第3話 決心
「お子さんについてのお話なのですが…」
医者は固い表情をして、話をしている。雰囲気も暗く重い。私は固唾を呑み、覚悟を決める。胸の鼓動が速く、大きくなるのを感じる。そして医者は口を開いた。
「2週間後には退院できますね」
私はほっと胸を撫で下ろした。
「良かったです。ありがとうございます」
退院後は進吾との残された日常が始まる…だからこそ進吾のやりたいことを全部叶えてあげたい。そう決心をした。
時は過ぎ、迎えた退院の日。時期はすっかり7月になってしまった。
「進吾、やっとお家帰れるよ」
「ほんと!?やったーー!!かえったらなにしよー!」
手を大きく広げ、喜んだ後、ノートを広げ、何をするかしっかり考えていた。
「さっき言ってたゲーム一緒にする?」
「やるー!」
まだ日が頭の上にある頃、進吾を連れて、家に到着した。
見慣れたはずの家の光景、しかし、どこか懐かしさを感じさせる。進吾はそそくさとテレビのところへと向かった。
「ゲーム!ゲーム!」
「ちょっと待ってー、準備するから」
私は荷物を置いた後、三脚を立ててカメラを回し始めた。
「なんでどうがとってるの?ヨーチューバー?」
「違う違う、思い出を残しとくためだよ」
これ旦那と相談して決めたことだ。
進吾が生きた証として、何事もないことでも動画に収めるようにした。
「えっと…?これで録画OKかな?」
赤いマークがしっかりと点いてることを確認してテレビの前に座った。
「よーし、負けないぞー」
そう意気込んでゲームを始める…と思いきや…
「で?進吾、どうやってこれ進むの?」
「え?わかんないの?」
「お母さん普段ゲームしないからね」
操作方法を教えてもらい、なんとか
覚えたところで再開となった。
「もー、また抜かされちゃったよー」
「またぼくかっちゃうよー?」
「私、安全運転で行ってるから」
私たちは時間なんて忘れて、一緒に遊んでいた。
ちなみに私は下から1、2番目を彷徨っていたことは言うまでもない……。最近のゲームって難しい……
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