第42話「海」(2024/7/27)
3歳の時か、それとも4歳の時か、定かではないけれど、モノクロの映像としてうっすらと脳のメモリに残っている母との最初で最後の記憶。母と手を繋いで、浜辺を歩いていた。寄せては返す波に晒されているうちに、足の指の間に小さな石ころが挟まってしまって、気持ち悪くて母に泣きついた。
自分が何を言ったのか、母が何を言ったのか、海が何を言ったのか、この耳で確かに聴いたはずの記憶は何もない。
それでも、楽しかったという心の記憶は確かにある。
「ママ、足になにかはいっちゃった」
3歳の娘が、泣きそうな声で私に抱っこをせがんできた。抱き上げて、足についた砂を払ってやる。
余命半年の私ができることは、何でもやってやりたい。
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