第26話「アカシックレコード」(2024/7/11)

 「アカシックレコード」をご存じだろうか。この世の全ての情報は「アカシックレコード」に蓄積されており、宇宙のような大規模な話から、人間一人――例えば私――の人生のような小規模な話まで漏れなく記録されているのだという。宇宙図書館ともいえる存在だ。

 私は、ついにやった。「アカシックレコード」へのアクセスに成功したのだ。

 宇宙の成り立ち、地球の誕生、恐竜、ノストラダムスの予言の真意、何でも知ることができるのだ。いったいどの記録から覗いてやろうか。この情報さえあれば、金も地位も満足いくまで手に入れられるだろう。私の未来は明るいに決まっている。

 未来の話が出たので、手始めに私の未来について見てみよう。まあ、見るまでもないだろうがね。

 どれどれ。「アカシックレコード」の記録の一端を覗く、とあるな。今まさに私がやっている。現在の話だ。

 それでは、未来は――?


 数多の起こり得る未来が脳内を駆け巡り、その情報量に処理が追いつけなくなった私は、意識を手放した。そして、二度と目を覚ますことはなかった。

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