第20話「令和のバルバトス」(2024/7/5)

「ぶるあああ!」

 朝の通勤時、駅構内を歩いていると、後ろが騒がしくなった。

「スマホ歩きなぞ、してんじゃあ、ねえ!!」

 何事かと振り返ると、青いパーマのゴリマッチョが、サラリーマンからスマホを奪って叩きつけていた。呆然とする被害者を尻目に、青パーマッチョはどすどす歩き去っていった。


「ぶるあああ!」

 その日の昼食時。ラーメン屋の列に並んでいると、後ろから聞き覚えのある声がした。

「割り込みなぞ、してんじゃあ、ねえ!!」

 朝の青パーマッチョが、柄の悪い若者二人をラリアットで同時に成敗していた。


「ぶるあああ!」

 その日の夜。仕事終わりにコンビニに寄ったところ、駐車場からまたしても聞き覚えのある声がした。

「未成年が酒なぞ、飲んでんじゃあ、ねえ!!」

 高校生くらいの男の子二人が手にしていた缶チューハイを奪い取り、二本一気に飲み干した。握力で空き缶が潰れた。

「……してます」

 男の子たちは、震えながら、小さな声で主張した。

「俺たち、成人してます……」

 青パーマッチョはコンビニに入り、2分ほどで戻ってきて、袋を彼らに押しつけた。缶チューハイが2本入っていた。

「今日の俺は紳士的だ。良かったな……」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る