きたぐに戦隊えぞスリー! ~摩周湖は今日も涙の霧~

西川 旭

第1話

 ◇



 前略、偉大なる北の大地に君臨する尊き大神さま。

 私です。

 摩周湖の精霊神にして、エゾスリーの参謀役、摩周ブルーです。

 馬鹿どもが言うことを聞いてくれません。

 どうにかしてください。


「おい、ブルー。なにブツブツ言ってやがる。ちゃんと仕事しろや。まったく使えねーなこの水たまり女はよお。ハンカくせーんだっつうの」


 この横暴な声の主はレッド。

 そう、あなたがた至高の神々が、北の戦士エゾスリーにスカウトした、赤の精霊「かにレッド」です。

 そして彼こそが、きたぐに戦隊としての活動をむやみやたらにかき乱し、私の精神力をゴリゴリと削っていく最大の元凶でもあるのです。


「あ、このカレーまん、じゃがいもが入ってないや。もう買わないどこ」


 カレーと芋の話しかしない、じゃがイエローのことはひとまず置いておきましょう。

 食い物の話ばかりで鬱陶しい以外は、特に害のない男ですから。

 

 ああ、しかしこんな連中と組んで、果たしてろくな務めが果たせるかどうか。

 わが主、偉大なる水の神、ワッカ・ワシ・カムイよ。

 いい加減、私も恨み言を我慢するのはやめました。

 次にお会いするときには、人選の再考を申し上げる次第でございます。

 

「人の話聞いてんのかって言ってんべや! 摩周湖いっぱいに灯油撒いてテメーの霊力を根こそぎ奪っちまったっていいんだぞコラァ! どうせ摩周湖は海につながってるわけじゃねーからテメーが腐れたって海が汚れるわけじゃねーしなァ!?」


 レッドの暴言が激化してきました。

 私の存在をゼロにしてしまうような、恐ろしいことを言っています。


「ブルーちゃん、レッドくんが切れないうちにさっさと仕事モードに戻ってよ。僕もおなかが空いたからさっさと仕事を終わらせて新しいスープカレーのレシピを研究したいんだよ」


 イエローは、いつも幸せそうでうらやましいです。

 私も彼のように安定した精神で生きていきたい。

 カレーと芋のことしか考えてないだけのような気がしますが。


 仕事の目的地が近いようです。

 川の嘆きが、水辺に住む小さな生き物の慟哭が、私の精神に響きます。

 仕事の報告は、追って詳しくお伝えいたします。

 それ以上の恨み言を添えて。

 では。

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