第14話 私は焦っている
☆
単純にお姉ちゃん。
妃さんは...忙しいと思う。
忙しいっていうのは簡単に言うと彼女自身の家庭環境があり。
かなり忙しいのだ。
私はそんな妃さんをよく見てきた。
だからこそ。
私は妃さんに幸せになってほしい。
そう願いを込めている。
だけどこの世の中はうまくはいかない。
妃さんは親から逃げている。
何故か。
理由は簡単だ。
家庭環境があまり良くない。
妃さんはよくこう言っている。
「...私は男性が怖い」
そう言いながら彼女はよく身震いしていた。
実は聞いた噂だが彼女。
つまり妃さんは一度、お付き合いした人が居るらしいが。
それも嫌々だったらしい。
それがあるから私は彼女の親に腹を立てていた。
だが。
私なんかでどうにかなる問題ではない。
だから私は何も言えない。
そう思いながら私は彼女をもどかしく見ていた。
正直に言って私は...彼女の事を救いたい。
あれだけお世話になったから。
そう思いながら私は妃さんを見送った。
それから私は「...」となりながら横の彼を見る。
私のお兄ちゃんを。
そうしているとお兄ちゃんは「帰るか」と苦笑してきた。
私は「だね」と笑み返す。
「俺は妃さんを...救いたいけど彼女の家族がな」
「気持ちは分からなくない。私も救いたいよ。お兄ちゃん」
「だな」
「だけど私達は子供だしね。彼女のご家族には関われないね」
「妃さんにはマジに世話になったんだけどな」と話すお兄ちゃん。
私は「そうだね」と返事をした。
それから私は歩き出した彼の背中を追う。
「正直。大人だったらどうにかなったかもな。俺らが...な」
「うん...」
「まあ仕方がないな。俺らはクソガキだから何も出来やしない」
そう言いながら寂しそうな感じでお兄ちゃんは歩き出す。
それからお兄ちゃんは「...だけど全てを守りたいのは事実だ」と言う。
「そしてお前もな」と私に向いてくるお兄ちゃん。
私はその姿に「...」となってから抱き締めた。
「...お兄ちゃん。愛してる」
「...そうだな。有難うな。ナターシャ」
「...私にはお兄ちゃんしか居ない。だからお兄ちゃんの愛が途切れたら私が復活させる。...お兄ちゃんを愛しているから」
「...」
そして私はお兄ちゃんを硬く抱きしめる。
するとお兄ちゃんは「...お前を必ず守るから」と言う。
私は「無理はしないでね」と笑顔になる。
「...私は何時でも此処に居る」
「...ああ。有難うな。ナターシャ」
そうしてから私達は帰宅する。
それから私は実家に帰ろうと曲がり角を回った。
するとその場に妃さんが居た。
私を見ながら悲しげな顔をする。
「き、妃さん?どうしたんですか?」
「...ゴメン。...実は彼と一緒じゃ話したくなかったから。女子同士で話したい事があってね」
「...じゃあ家に入りますか」
私は妃さんに笑顔になる。
それから私達は家の中に入る。
そして話し始めた。
☆
「栄一郎」
「...よお。どうしたんだ」
「...さっきの女性...何だか...」
「お前は察しが良いからな」
自宅の前。
俺は彩香、彼女を見る。
黙っていると彩香は「...その」と言い出す。
それから俺を見てきた。
「...困った事があったら私に相談してほしい」と言ってくる。
「...ああ。その時は必ず」
「...貴方の目が...悩んでいるから」
「俺の目が?...まあ落ち着いて。それは無いから」
「いや。悩んでいる。...私だから気が付いた。私だから」
俺に向いてくる彩香。
それから抱き締めて来た。
「お、オイ!?」と言いながら俺は慌てる。
そして彼女は「...栄一郎が好きだから」と言う。
「...だから悩んでいる姿を見たくない」
「それは分かるが...だけど抱き締められるとおま」
「良いじゃない。別に」
「...い、いや。俺が困る」
「...ねえ。栄一郎。家に行っても良い?」
ボッと赤面しながら俺は「い、いや。それは」と慌てる。
だが彩香は心配げな顔を辞めない。
俺はその顔に「...分かった。少しだけだぞ」と家の中に彼女を招いた。
それから俺はリビングにて溜息を吐きながら彩香の正面に腰掛ける。
「...なあ。そんなに心配しなくても俺は死んでいる訳じゃ無いから」
「違う。栄一郎の笑顔が見れないのが嫌なの」
「...そういう事か」
「そう。だから笑顔になってほしいから」
「...優しいよな。彩香は」
そう言いながら俺は彩香を見る。
すると彩香は立ち上がった。
それから俺の元にやって来る。
な、何でしょう?
「...」
俺の横に腰掛ける彩香。
それから俺の胸に手を添えて来る。
俺は「な、何をしている!」と言いながら彩香を見る。
彩香は俺の手を握る。
そしてその顔を向けてくる。
潤んだ瞳が見える。
「...ねえ。栄一郎。私は貴方が好きだから。その分私は何か出来る事は無いかな」
「...な、無いな。とにかく離れてくれ。ヤバいって」
「そうかな」
「あ、あのな!俺は男子だ!ヤバいって!」
「...私は女子だよ。...女子って一途になるとヤバいって知ってる?」
ヤバいって何が!?
俺は後退するが...ソファは小さい。
四つん這いの彼女に追いつめられる。
それから俺は赤くなる。
「だからさっきそれはいけないって言ったろ!」
「...だけど状況が違う」
「違わないわ!や、やめてくれ!?」
「実際、私は焦っている」
「な、何にだ!?」
「...貴方の周りに」
ヤバいわ!た、助けて!?
赤くなった彼女の濡れた瞳を見ながらそう思う。
美少女だから。
だから!
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