あるく、めぐる、なつ 【第2回カクヨム短歌・俳句コンテスト二十首連作部門】

宮緒かよ

あるく、めぐる、なつ

あの夏の思い出としてクルミっ子探し歩いた鎌倉の街


交差点 手を振り渡る向こうから来るきみとすれ違わぬように


ぎこちなく交わす会話はちょうど十二か月分の年の差のせい


遠足でころぶ幼いきみを知る石畳へと今日を刻もう


ゆっくりと降りる階段ゆっくりと大仏様のからだの中へ


見上げれば空いつも離れて見てる空雲だらけでもごきげんな空


ストライプ柄のバッグとボーダーのパスケース 糸 みたいなふたり


ねぇ、ちょっとエセ関東人みたいだね。話し言葉をうつされており


飛んじゃってラムネの泡がほらまるで髪にはじける真珠みたいね


慣れている街をおんなじ熱量ではしゃいでくれるきみが好きやな


ライブT 正装みたいに着てる人多いね 波にさからい歩く


理由ならとってつければいい迫る別れに抗うための行列


長すぎる名前で覚えられなくてなんちゃらラテにきみの名前を


持ち寄った時間ときが一瞬すぎるから雨宿りさえできず夕暮れ


リスなんて出てこない駅までの道 人・人・人の足ばっかりで


ハグよりも握手をしよう記憶するためにまぶたのシャッターを切る


またねって手を振りながら改札の口に飲み込まれていく背中


サンダルに零れ落ちたる一粒が濡らすオレンジ色のペディキュア


江ノ電に乗れば良かったあの夏の 巡る季節にきみはいなく


追いこさず永遠にするちょうど十二か月の差をわたしの中に

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