第3話 廃課金者の叫び
「ハアハアこれで百六十連目だ!」俺は叫ぶ!
俺はしがないサラリーマンだ。なぜこんなにもガチャを回しているかと言うと、今回のガチャには推しが出るからだ。超天使ラファニール、こいつは環境トップキャラではない、むしろハズレ扱いされているキャラだ。決して弱くはないが、強くもない、まあ一ヶ月で消えるようなキャラだ。しかし、俺はこいつを当てなければならない。弱くてもだ。
必死に必死にガチャを引きまくる。確率0.8パーの超天使ラファニールを求めて。俺は相方の大魔神ドラゴラルの方はもう四体も当たっている。ちなみにドラゴラルはゲームバランスを崩壊させたキャラとして有名だ。普通の人はこう言うと思う、ドラゴラルが当たったんやからラファニールぐらいどうでもいいだろって。しかし、俺は違う。環境トップがなんだ、俺は好きなキャラを使いたいのだ。弱くてもいいのだ。
幸いこのゲームは弱いキャラでも大体のクエストはクリアできるようになっているのだ。それは最高なことだ。俺はどんな人でも惜しキャラを使うことができるようにしている粋な計らいだと考えている。
さてそんなことを考えながらさらに三十連したのだが全く出る気配がない。ちなみにこのゲームはいわゆる天井というものがない。つまり百連回そうが千連回そうが、排出率は永遠に0,8パーセントなのだ。俺はだんだんとイライラしてきた。
俺は金は持っている。しかし金持ちではない。できるだけゲームにお金はかけたくはないのだ。回せど回せどなかなか出ない。ただ回していてもむなしくなるだけだ。二百十連、二百二十連とだんだんとガチャを引くのが楽しくなくなってきている。こんなことをして何か意味があるのか、こんな所詮データだけの存在推しとはいえ意味があるのかと。このイベントのために課金した一万ジュエル(二十万円)が次々となくなってゆく。もう残り二千五百ジュエルしかない。もう引けるのはあと十連だけだ。もう単純計算で0.8かける三百連で約二百四十パーセントの確率で当たるはずなのに当たらない。むなしい、きっといま確率はひどいことになっているはずだ。
十連を引いた、虹演出が出た。もう百十連見ていなかった演出だ。これはいける、いけるぞと胸を躍らせた。こいこいこいこい、俺はそう叫んでいた。もう当たっても許されるはずだ。そう頭の中で考えた。一人目星二、二人目、星三、三人目星三、短弾と降ってくる、しかし俺はこの十連で押しが出ると確信しているのだ。これまでの出来事は単なる神の試練だ。そう信じている。四人目常設星四人目星三、六人目常設星四、七人目星三、八人目ドラゴラル。
俺は焦らない、なぜなら虹演出は十体目にかかっているのだ、むしろこのドラゴラルは推しが出る伏線だ。九人目星三、いよいよ推しとのご対面だ、心なしか緊張してきた、これで俺の努力は報われるんだ。そう思ったその時、ドという文字が見えた。終わった俺はそう感じた。降ってきたのはドラゴラルだったのだ。なんなんだよ子の運は! 俺は叫んだ、叫びまくった。近所迷惑など何も考えずにただ叫んだ。しかし、ふと我に返ってみるとまだジュエルは二千二百五十ジュエルが残っている。まだだ、まだ希望は残っている。俺は引きまくった、ただ引きまくった。結果は惨敗だった、あれからドラゴラルさえ降ってこなかった。もう俺は終わった、この二十万円がゴミになってしまった。俺はもう課金はできない、これ以上課金するともうもやししか食べられなくなるのだ。ああ、最悪だ、最悪だ、最悪だ。俺は気を取り直してクエストでジュエルの回収をする。
しかし、気の遠くなる作業だ。それも当たり前だ、十連に必要なジュエルは二百五十個、一回のクエストクリアでもらえるジュエルは五個、つまり五十回クエストクリアしないといけないのだ。俺はひたすら無感情でクエストをクリアしていく。そして十連分のジュエルがたまった。ついにガチャを引けると考えたらうれしくてたまらなかった。祈りながら十連ボタンを押す。確定演出が来た。いよいよだ、いよいよ対面の時だ。ラファニールという文字がはっきりと見えた。一人目で来たのだ。神が下りてきたのだ。もうこうなったらあとのガチャは関係がないとハイテンションでスキップボタンを押す。すると結果画面には三人のラファニールが表示されていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます