第3話 魔眼と聖眼
義妹とは言いつつも、生まれた年は一緒であるため、学園へ通えば同級生である。
しかし、8歳から15歳まで通う事になる学園に少女は通わせては貰えていない。
身だしなみ……服装に関してだけは改善し、まともなものを着させて貰えるようになっていた。
しかしそれは貴族令嬢としてではなく、他の使用人達と同じメイド服であった。
少女は目を隠すよう顔の上が隠れる仮面を装着する事を義務付けられ、使用人として扱われるようになっていた。
折檻の数こそ幼少時期よりは減ったものの、使用人として扱い、わざとミスをするように促し、ミスをすると折檻するというスタンスは変わってはいなかった。
少女はメイド業の合間に、隙を見て独学で勉強をしていた。
いつかここを出て独り立ちするために。
いつかここの連中に仕返しをして気を晴らすために。
いつかこの家門を落ちぶらせるために。
もっというならば、この家門を滅亡させるために。
約7年の歳月は、少女の心を蝕むには充分な時間であった。
そうに至るまでには理由、要因があった。
それは偶然目にした2冊の本。
メイドの仕事として図書館へ赴いた時の事。
普段は立ち入りの厳しい部屋で作業をしていた時、まるで導かれるように少女は本を手に取った。
その表紙には、それぞれ魔眼と聖眼について書かれている事がわかるものが描かれていた。
そして理解に至る。
右の紫の眼が魔眼。様々なものを数値として視る事が出来る眼。
例えば体力や筋力、魔力などの最大値と現在値を数値として視る事が出来る。
それらをステータスと呼ぶと本には書かれていた。
他には、その人物が持つ特殊能力、スキルと呼ばれるものも視える。
さらには魔眼のレベルに順じ、その者が行った大きな事(偉業ではない。)なども視れるようになるとも書いてあった。
確かに少女がこれまでに見てきた人物たちには数字と文字が見えていた。
幼少の頃には視えなかった。しかし、自身の年齢が重なり、右目の魔眼で様々なものを視てきた事によって、本が指すレベルアップを果たしたのか、様々なものが視えるようになっていた。
その中には、父と義母に共に母への殺害という文字が表示されていた事を。
左の水色の眼が聖眼。身体など様々な箇所が色やモヤとなって視える。そしてその色やモヤを変化させることが出来る。
俗にいう癒しや治癒という能力。色を変える事が即ち治癒という事である。
試しに自分の手についた傷を治るように念じると、赤に近かった色は緑を経て青へと変わった。
すると、傷口は完全に消え、痛みも違和感も完全になくなっていたのだ。
そこからは更なる実験を経て、色の段階を止める事が出来る事がわかった。
緑で止めると見た目は治ったように見えるが、若干の違和感が残るという事もわかった。
逆に傷をつけられる事も分かった。
変な事になると後戻りが出来なくなる事を懸念し、元々ついていたような切り傷を想定して色の変化を行った。
すると治癒と同じように、まるで治癒の逆再生をしているかのような切り傷が出来た。当然出血もする。
そして2冊の本の最後の方にはそれぞれこう書かれている。
魔眼の本には、Sランク冒険者や一軍の将として役に立つ。
聖眼の本には、聖人や聖女として敬られ、教会などで崇め奉られるようなものだと。
「それなら、それら二つを持つ私は……神か超越者、魔王とだとでも言うの?あぁ、そうしたらあいつらが言うようにバケモノというのもあながち間違ってはいないのね。」
人は理解に及ばぬ存在の事を超越者やバケモノと呼ぶ節がある。
「私のこの眼の事、そして……あの二人がお母さまの仇である事を……知った。私は色々学ばなければならない。」
それから暫く図書館での作業が続いた後、屋敷からメイドの姿が一人消えた。
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