第2回カクヨム短歌・俳句コンテスト短歌の部【二十首連作】

麻人

食を愛してやまない、とある日本人の四季

急ぐ君 駅でバッタリ 言葉出ず

鼻を抜け行く タラの芽天ぷら


「おもしろい」 言ってやろうよ 

トラブルも

苦味も旨い ち鮎の唐揚げ


あの野山 幼馴染みと 思い馳せ

土の香りが 息吹くせり鍋


桃色の 季節に世代 意識して

吸い地に広がる 蛤の滋味


外回り もう帰りたい 行き先で

出されし桜湯 小さな花見


僕のこと せめて僕だけ 褒めてやる

汗かくグラス キンキンビイル


ダイエット 飯の始めは 野菜とし

冷えたきゅうり 塩、いやマヨか


あるんだよ 香りに色が 君が言う

青い香りだ 茹でた空豆


どの色も 認められたら いいのにな

色とりどりの アイスキャンデー


ふるさとを 恋しく思う 蝉の声

古い木桶に 氷と西瓜


暑くない 寒くもない夜 幸せが

鼻腔に広がる 松茸の香


世知辛い 社会に揉まれ 焼き芋は

炭を起こして 甘味起こして


やっときた ビジネスチャンス 掴むだろう

秋刀魚の脂 煙立つ木炭


愛情は 何だかんだで 手間ひまよ

成果ハッキリ 栗渋皮煮


素っ気ない 愛しい君は なに思う

月にかざして お月見だんご


愛せども 振り返らない 愛せども

おでんハフハフ 熱めの日本酒 


ありのまま そのままの君が 好きなんだ

水も入れない 白菜のスープ


君にはさ 同郷の僕 なんてどう

円い海塩 生牡蠣ちゅるん


荒波に もがく自分へ ご褒美を

出汁まで染みる 甘美の毛蟹


農業に 電力、自然 おかげさま

心ぬくもる こたつでみかん

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

第2回カクヨム短歌・俳句コンテスト短歌の部【二十首連作】 麻人 @asahito39

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画