第7話 再びの決着
湯布院の朝、霧が薄らぎ、澄み渡る青空が広がっていた。香織と涼介は、美咲を追跡するため、町の小道を駆け抜けていた。霧の中に消えた美咲を見失わないよう、彼らの足音が石畳に響く。
「涼介、急いで!」香織は焦りを感じつつも冷静な声で呼びかける。涼介は無言で頷き、共に美咲の足跡を追い続けた。
やがて、二人は町外れの古びた倉庫にたどり着く。そこは静寂に包まれ、風が草木を揺らす音だけが響いていた。倉庫の扉がわずかに開いており、中に入ると薄暗い空間が広がっていた。
「ここにいるはず…」香織は呟き、慎重に足を進めた。涼介も後に続き、周囲を見渡しながら進んだ。
倉庫の奥に、美咲の姿があった。彼女は古い木箱の上に座り、泣き崩れていた。薄暗い光が彼女の涙を輝かせ、まるで悲劇の一幕を演じているかのようだった。
「美咲さん…」香織は静かに声をかけた。「もう逃げなくていい。私たちはあなたの真実を知りたいだけです。」
美咲は顔を上げ、涙で濡れた瞳を香織に向けた。「私は…私は彼を裏切った。内山を愛していたのに、その愛が憎しみに変わってしまった。」
香織は彼女に近づき、優しく語りかけた。「美咲さん、あなたの気持ちは理解できます。でも、その感情が事件を引き起こしたことを認めることが必要です。」
美咲は深いため息をつき、過去の出来事を思い出すかのように語り始めた。「内山との関係が終わったとき、私は深く傷ついた。そして、その傷が癒えることはなかった。彼を恨む気持ちが募り、ついにその感情が爆発したの。」
香織は美咲の手を握り締め、静かに頷いた。「あなたの痛みが事件の引き金となったのですね。」
涼介もまた、美咲の言葉に耳を傾け、冷静に状況を分析していた。「美咲さん、その時の行動を詳しく教えてください。私たちは真実を知りたい。」
美咲は涙を拭い、震える声で続けた。「事件当日、私は内山に会いに行きました。彼に私の感情をぶつけましたが、彼は全く反応しなかった。それがさらに私を追い詰めたんです。そして…私は彼を陥れるための行動を取ってしまった。」
香織と涼介は、美咲の告白を聞きながら、内山の無実を証明するための最後のピースが揃ったことを確信した。美咲の言葉により、事件の全貌が明らかになり、内山が無実であることが証明された。
「これで全てが明らかになりましたね」と香織は静かに言った。「内山さんは無実です。美咲さん、あなたの勇気ある告白に感謝します。」
美咲は涙を流しながら頷き、「ありがとうございます。私は罪を償います」と言った。
美咲の告白が終わり、内山の無実が証明されると共に、彼は釈放される。しかし、香織と涼介は新たな証拠を手に入れたことを知る。その証拠が示すのは、事件の背後にさらに複雑な陰謀が存在していることだった。次の謎に直面することとなる二人の探偵に、新たな挑戦が待ち受ける。
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