第4話 過去の記憶と現在の謎

香織は、湯布院の古い資料館の一室で、事件当時の証言を再度確認していた。木製の書棚には古びた書類やファイルが並び、窓から差し込む柔らかな陽光が埃を浮かび上がらせる。香織は一つ一つの証言を慎重に読み返し、事件の真相に迫ろうとしていた。


「涼介、この証言には何かおかしな点があるわ」と香織が言う。彼女の指先が一枚の証言書の上を滑りながら、重要なポイントに留まる。「事件当日の目撃情報が食い違っている。美咲の存在が鍵になるかもしれない。」


涼介は香織の隣で、静かに彼女の分析に耳を傾けていた。「香織、美咲の過去についてもう少し掘り下げてみよう。彼女の行動や背景を調べることで、新たな視点が得られるかもしれない。」


香織は過去の記憶を辿り、美咲と内山の関係を調べ始める。霧が立ち込める湯布院の朝、香織は内山の温泉宿「静香亭」の一角で、美咲との写真を見つける。写真は古びたアルバムの中に大切に収められており、二人が楽しそうに笑っている姿が写っていた。背景には、美しい紅葉に彩られた庭園が広がっていた。


「この写真…美咲と内山さんは昔、恋人同士だったのね」と香織が呟く。彼女の心には、美咲の動機が少しずつ浮かび上がってくる。


涼介もまた、美咲の過去を調査するために、地元の人々に話を聞いて回る。ある古びたカフェのオーナーから、美咲が内山と別れた後、彼女がどれほど深く傷ついていたかを聞かされる。オーナーの言葉が、香織の胸に深く響く。


「美咲は内山さんを愛していた。しかし、彼女の愛が裏切られたと感じたとき、その感情がどれほど強烈だったか…」オーナーの語る言葉には、美咲の痛みが滲んでいた。


香織は涼介と共に、美咲の現在の居場所を突き止めるために、町中を歩き回る。彼女の足取りを追う中で、二人は美咲が最近訪れたという古い神社にたどり着く。神社の石段を登ると、そこには緑の苔に覆われた石灯籠が並び、神秘的な雰囲気が漂っていた。


「美咲はここで何をしていたのかしら」と香織が呟く。


涼介は神社の境内を注意深く見渡し、何か手がかりがないか探し始める。「この場所で美咲が何を見つけたのか、それが事件にどう関わっているのかを突き止めなければならない。」


神社の境内で、美咲がよく座っていたという場所を見つけると、そこには古びた木箱が隠されていた。香織が慎重に木箱を開けると、中には古い手紙と写真が入っていた。


「この手紙…美咲が内山さんに宛てたものね。彼女の気持ちがここに記されているわ」と香織が言う。手紙には、美咲の内山に対する複雑な感情と、事件の真相に迫る重要なヒントが書かれていた。


香織は手紙の内容を読み、美咲が内山の元恋人であったことを確信する。美咲の動機が浮かび上がり、彼女の心の傷と復讐心が事件の背後にあることが明らかになる。次回、香織と涼介は美咲の証言を元に、さらに事件の真相に迫ることを決意する。

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