第3話:新人メイドさん。
今日は新人のメイドさんが紹介される日。
アトムはいつものようにカウンター席に陣取った。
カウンターの中に、メイドさんが二人いてアトムに愛想を振りまいた。
ひとりはアトムをフったレイちゃん・・・もうひとりはアンちゃん。
もちろん、ふたりともガイノイド。
「お帰りアトム」
先にそう言ったのはレイちゃん。
「おっはよ、レイちゃん」
「アンちゃんも、おはよう、相変わらず可愛いね」
「誰彼なしに可愛い可愛いって言ってたらウソっぽいよアトムちゃん」
「それにレイちゃんはともかく私を口説いてもダメだからね」
「なにも言ってないだろ?」
早くもダメだしされた。
他のメイドさんたちはそれぞれ客からオーダーを取りに右往左往していた。
カフェがオープンしてしばらくして店の奥からオーナーが出てきた。
その後ろに、ちらっと白い衣装とメイドさんが見えた。
「おっ、ついに新人さんお披露目か?」
そしてオーナーが新人メイドさんを自分に前にいざなった。
「はい、前に出て・・・」
で、その瞬間だった。
オーナーが新人さんを紹介する前にアトムはそのメイドさんを見て固まった。
アトムの周りの風景が、空気が、時間が止まっていた。
私のハートはストップモーションって・・・まさにそれ。
と思ったら心臓はバクバク、アドレナリンにドーパミン大量放出。
アトムの目の前に現れたメイドさん・・・まさに彼の理想の女性だったんだ。
内面はどうあれ、見た目だけで言うなら、もうこの子しかいない。
この子しかもう見えない。
俺のためだけに現れた天使・・・思い込みでも勘違いでもいい、アトムは
そう思った。
茶髪に最強のツインテールに髪飾り。
整った顔立ち・・・めちゃ可愛い、キュート、ピュア、ビューティフル
プリティ、スイート、チャーミング、そしてセクシー。
美に関する言葉を全部並べも足りないくらい。
真っ白なメイド服がよく似合っていて、その笑顔がめっちゃ眩しかった。
そうアトムは新人メイドさんに瞬殺で恋しちゃったんだな。
曇った空も青空になった訳だ・・・でも輝く太陽をその手に掴めるかどうかは
アトム次第。
ショックのあまりオーナーが彼女を紹介したことも彼女が自分のことを
自己紹介したことも頭が異次元に飛んで放心容態だったアトムはなにも
耳に入ってなかった。
しまった彼女の名前を聞き逃した。
だからアトムはすぐにカウンターの中にいたレイちゃんに問いただした。
「ごめん、レイちゃん・・・あの新人さんの名前なんてった?」
「なに?聞いてなかったの?」
「あの子の名前は「
「え?ネズコ?」
「一文字もあってない・・・ウランちゃんだよ」
「耳鼻科に行って来い、アトム」
「おう・・・ウランちゃんか・・・」
「ウランって聞いてなんか懐かしい感じがする・・・」
「アトム・・・鼻の下がびろ〜んて伸びて顎が床についてるよ」
「まさか・・・アトム、ウランちゃんを口説くつもりじゃないでしょうね?」
オーナーはウランちゃんを連れて奥へ引っ込んでいった。
「え?口説いちゃダメなのか?」
「今から言っておいてあげるけどライバルだらけだよ」
「ウランちゃん目当てに鼻の下伸ばしたお坊ちゃん達が、わんさかレ◯ウンの
CMみたいにカフェにやって来るの目に見えてるもん」
「そうか、そのこと考えてなかった」
晴れていたと思った空がまた曇った。
とぅ〜び〜こんて乳。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます