メイドさんが全員ガイノイドだけのメイドカフェ。 だから人間のメイドさんは一人もいない。 それが「メイドカフェ・ユー・メイ・ドリーム」

第1話：メイドカフェ・ユー・メイ・ドリーム。

「ねえ、レイちゃん・・・僕の彼女になってよ」

アトムがレイちゃんを口説くのはこれで何度目だったか指折数えた。

ちょっとウザいって思っても男にそこまで想われたら女は悪い気はしない。

まして玲ちゃんは、アトムのことが嫌いじゃなかった。

断っちゃう理由もなし・・・付き合ってもいいかなってレイちゃんは思った。

「付き合ってくれると嬉しいんだけそな〜」

「ところでさ、このカフェ経営元ってエイミー・トムソンだっけ？」

「そうだけど？」

「あ〜エイミーか・・・あそこのガイノイドポンコツ多いらしいからな」

「なによ、ポンコツって・・・私もエイミーだよ、失礼ね」

「モテないくせに贅沢言わないの・・・そう言うデリカシーないこと言うから

アトムちゃんは彼女ができないのよ」

「私がイヤならいいよ、別に・・・」

「いやいやいや、俺の彼女になるのはレイちゃんただひとりだから」

「彼女になってくれたら文句など一切申しません、はい」

ちなみにアンドロイドと呼ばれてるのが男性型。

ガイノイドって呼ばれてるのが女性型のヒーマノイド。

ちなみにセクサロイドと呼ばれるのがセックスに特化したヒューマノイド

のことを言う。

でも、たいがいのガイノイドはその機能を装備している。

より人間に近い存在ってのがエイミー・トムソンのポリシーだそうだが

本当は人間の女性の代わりになれないガイノイドなんて売れないからだ。

アトムが今どこにいるかって言うと、秋葉原のメイドカフェにいる。

メイドさんが全員ガイノイドだけのメイドカフェ。

だから人間のメイドさんは一人もいない。

アンドロイドやガイノイドを製造してる会社エイミー・トムソンが経営して

いるメイドカフェ。

それが「メイドカフェ・ユー・メイ・ドリーム」

ガイノイドのメイドさんがいるカフェはセクサロイド一軒だけだった。

だから他の店に足を運ぶ必要もないし足を運ぶ訳にはいかなない理由が

アトムにはあった。

「江戸川 アトム」25歳は、都会で片隅でひとり暮らし。

秋葉原（あきばはら）のジャンクな店で店員をしていて、ついでにその店の

二階に間借りしている。

足はもっぱら、小回りが効く小ぶりのバイク。

バーチャル系・ホビー系全般、生き物以外をこよなく愛する無機質系オタク。

なんでアトムがメイドカフェに入り浸ってるかって言うと彼は彼女が欲しく

ても、もう人間の女性と付き合えないからだ。

もともと女性が苦手だったアトム。

それでもこの間まで、とあるメイドカフェの人間のメイドさんの「みっちゃん」

と付き合っていた。

ところがちょっとしたトラブルでアトムはみっちゃんに思いっきりフラれ

心身ともに立ち直れないほどの大失恋を経験した。

人なんて、女なんて恐ろしくて信用できない代物。

人間不信、被害妄想、自暴自棄・・・で、あげくアトムは女性恐怖症になった。

ただし人間の女性にかぎってね。

ガイノイドは人間の女性より素直で優しく作られてるから決して男を裏切ら

ないし傷つけるようなことはない。

だからアトムにとってガイノイドなら直接話をしても触れても大丈夫なのだ。

女性はって意味において人間以外で言えばアトムにはガイノイドしかいない訳で・・・だからアトムはレイちゃんを口説いていたのだ。

アトムの大失恋の事情を知らないレイちゃんからしてみれば、アトムは、

ガイノイドじゃなくて人間の女性を彼女に持てばいいじゃんって思うわけで、

そんな思いもあってアトムの誘いを躊躇（ちゅうちょ）していた。

つづく。