それいけ!ディストピア飯マン
みなもとあるた
それいけ!ディストピア飯マン
「やあ!僕はディストピア飯マン!ディストピア飯のヒーローなんだ!困っている人がいないか、今日もパトロールをしているよ。ん?あそこにいるのはもしかして…」
「ディストピア飯マーン!お腹がすいたよー!」
「やっぱり3等市民のモルオ君じゃないか!またお腹を空かせているのかい?」
「だって1日3回支給される2号滋養配給食だけじゃぜんぜん足りないんだもーん。君の顔を食べさせておくれよー」
「ダメだよモルオ君、3等市民の君が食べていいのはクラスC以下のバイオ調合食だけなんだから。僕の顔になっている特Aランク生成食は、1等市民か上位指導者だけが食べることを許されたものなんだよ」
「そんなこと言わないでよー」
「もーモルオ君ったら、あんまりわがままばっかり言っていると偉大なる最高位指導者様に思想を粛清されちゃうよ?だから君のような3等市民は、指導者様の意志に従っておとなしくバイオ調合食を…」
「やい!ディストピア飯マン!今日という今日はお前をやっつけてやるぞ!」
「その声は!オーガニック食品マン!またいたずらをしに来たのか!」
「ハッハッハー!無農薬の天然食材で市民たちの舌を肥やしてやるぞー!まずは前菜の化学肥料不使用トマトからだー!」
「やめるんだ!オーガニック食品マン!」
「なんだとー?邪魔をするならまずお前からだー!くらえー!」
「うわー!」
「そ、そんな!ディストピア飯マンの顔に外界の赤い植物が…」
「うう…細菌を多量に含んだ外界の無農薬植物が顔面に混入したせいで可食性が担保できない…」
「どうだまいったかー!合成ではない本物の食材の味にお前らも驚くといい!」
「ディストピア飯マーン!配給の時間よー!」
「そ…その声は…バイオ子さん…僕を助けに来てくれたんだね」
「もう大丈夫よディストピア飯マン、この特Aランク生成食を使って!」
「よし!これで復活だ!元気等倍!ディストピア飯マン!」
「ふざけやがってー!ならば次はこれだ!食らえ!合鴨農法おにぎり!」
「うわー!」
「そ、そんな!ディストピア飯マンの顔に外界の白い植物が…」
「うう…外界の保菌生物に暴露した植物が顔面に混入したせいで可食性が担保できない…なんなら鳥インフルエンザとかそういうのも含まれてるかもしれない…」
「無様だなディストピア飯マン!というか顔面を交換したくせに元気等倍じゃ全然強くなっていないじゃないか!」
「だってディストピア飯は栄養が厳重に管理されているから、交換したところで品質は完全に同じだし…」
「諦めちゃダメよ!ディストピア飯マン!」
「バイオ子さん…でも、このままじゃどうしようも…」
「特Aランク生成食で勝てないなら、今度は次世代型配給タブレットよ!これなら完全耐熱・完全防水・完全防菌のパッケージに守られている上に、賞味期限は30年保証!しかもサイズが5ミリの錠剤だから手軽に飲みやすいしオーガニック食品マンの攻撃も当たりにくいの!さあ使って!」
「よし!これで復活だ!元気等倍!ディストピア飯マン!」
「な、なにー!?というかお前、顔が5ミリになったせいで声も小さくなってないか…?」
「もう一度勝負だ!オーガニック食品マン!」
「だったらこっちもとっておきだ!食らえ!食糧危機を解決する夢のオーガニック食品、コオロギ粉末パン!」
「効かないぞ!だって食用コオロギはバイオ調合食にもよく使われているからね!タンパク質をバイオ生成するためには欠かせない食材なんだ!」
「なにー!?お前らも食用コオロギを使っているだとー!」
「えっ…僕達3等市民の食べてる2号滋養配給食には外界の汚れた害虫たちが使われているの…?」
「食らえ!オーガニック食品マン!ディストピアッパー!」
「バイオバイオキーン!!」
…こうして、我々被管理市民の食の安全は守られたのでした。
皆さんも、外界の汚れた食品には決して興味を持たず、清潔なバイオ調合食だけを食べて健全に暮らしましょうね。
それが偉大なる最高位指導者様のご意思であり、皆さんに課された義務なのです。
それいけ!ディストピア飯マン みなもとあるた @minamoto_aruta
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