第11話 Began at the time(11)

なぜなら。



今のようなシチュエーションをもう何度も見ていたからだった。



香織が帰ってすぐに



はす向かいの秘書課から樺沢が出て行く。



なんでもないことなのだが



それが続くと



あれ?????



と思い始める。



匂うなァ・・




南はうーんと腕組みをした。



「はあ?? 姐さんとカバが?」



南は何かにつけて



くだらないことでもすぐに志藤に相談する。



夫である真太郎よりも先に。



「なんかさあ。 すっごく匂うねんけど、」



南はものすごい秘密を知ってしまったかのように声を潜めて言った。



「ありえへんちゃうのお? だっておれ、あいつらのツーショットも見たことあらへんで?」



志藤は笑い飛ばした。



「ツーショットがないから・・不自然ってゆーか。 前にもね、あたしとかおりんが社食でゴハン食べてたら、あとからカバちゃんが来たのよ。 一緒に食べてたんやけど、かおりんてばすぐに『じゃあお先』とか言って席立っちゃったの。 いつもだったら昼休み時間中、ずううっとしゃべってんのに。」



「てゆーか。 姐さんがカバのこと嫌いなんちゃうの?」



まっとうな意見だった。



「て。 普通は思うやろ? でもな・・あたしの宇宙コマよりも高速回転のこの頭が。 感じるねん、」



南はちょっと得意気に言ったが



「宇宙ゴマがもう古い!」



志藤は大ウケしてしまった。



「そんなんはどーでもええって! とにかく。 あの二人は、要チェックやで!」



南は志藤のデスクをバンっと叩いて行ってしまった。



「なんのチェックや!」



志藤が彼女の背中につっこんだが、ずんずんと歩いて行ってしまった。



ったく。



おせっかいやな・・



どう考えてもカバがコッチ来てまだ2ヶ月にもならへんねんで。



あいつがソッコーで『あの』姐さんを落とすか??



ありえへんて!



ていうか



『あの』姐さんが・・カバに落ちるか??



志藤は全く本気にしていなかった。



と思いつつ




それから志藤も何となく二人のことを気にした。



樺沢が志藤に仕事の用事で事業部に来る時も



彼女に視線を移すとか



そんなことは全くなく、



ふたりで廊下を歩いていて、香織に遭遇しても



特に目を合わせることもなく。



どう考えても



南の『直感』は当てになりそうもなかった・・



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る