第40話 フィジェル宰相、ガイル大司教失墜?


 ティルキア国では緊急議会が開かれていた。


 議員は元貴族や騎士や街からの代表者などからなる。


 そこにはフィジェル宰相、ガイル大司教、ホワティエ元公爵、ロガレナート元侯爵、グレン騎士隊長などが揃っていた。


 ロガレナート元公爵が口火を切る。


 「ガイル大司教一体この責任はどうとられるつもりなんです?」


 「ですが、私一人の責任ではありません。聖女をマイヤにすると言ったのはフィジェル宰相です。私は反対しました。アリシアは聖女として最も優れていたんですから、それなのに…」


 「フィジェル宰相。あなたの責任は重いですよ。ご令嬢を聖女に押しておきながらマイヤ嬢は聖女としても失格おまけに魔界の扉まで…皆さん。フィジェル宰相に辞して頂くことも考えなければなりません?」


 「「「賛成!そうだそうだ!フィジェルは引退しろ!」」」


 次々に罵声が飛ぶ。



 ロガレナート元公爵はみんなが静まると次の議題にかかる。


 「静粛に!それでは後ほど採決を取りますので。次の議題についてゴールドヘイムダルの騎士隊長から報告をさせていただきます。国王ルキウス陛下のご病状についてです」


 レオンが席を立つと前に出る。


 「実は以前から国王ルキウス陛下のご病状には不審な点がいくつもありまして調査をしていたところです。陛下は水晶中毒とされて治療をされておりましたが一向に回復の兆しも見えませんでした。それで私は陛下を別の場所に移し知り合いから直接水晶中毒の解毒薬を仕入れまして医者や看護師も私が選任して解毒薬を投与しておりましたところ、すぐに効果が現れました。今ルキウス陛下はすっかり体調を回復されて今日にも王宮にお出ましになられるかと思います。陛下が依然使っていた水晶中毒の解毒薬を調べましたラ全くの偽物とわかりました。医師はフィジェル宰相の手の者に家族を人質に取られており、これも解決しております。その医師から最近の現国王ニウシス様の体調不良もフィジェル宰相の指示で毒薬の投与のせいだと訴えがありましたのですぐに対処しております。報告は以上です」



 議会は騒然とした。


 「あいつそんなことまで‥」


 「そう言えばあいつの息子を国王にとか言ってたな。ふざけるな。おい、フィジェルただで済むと思うなよ!」


 「そうだ。そうだ。」


 「フィジェルを捕らえろ!」


 ロがレナート元公爵がすぐに声を上げた。


 「近衛兵、フィジェルを捕らえて牢に」


 その指示で扉の外で控えていた近衛兵がフィジェルを連れて行く。


 「クッソ、すべてうまく行ってたのに…マイヤの奴。あいつが…」フィジェルはうなだれたまま連れて行かれる。


 「それでは皆さん、ずっと体調不良だったルキウス国王陛下ですが、元通り元気になられたということですので、国王にはルキウス陛下に戻って頂くと言うことでよろしいでしょうか?」


 すぐにルキウスを国王とすることで満場一致で決まった。


 「それではみなさんいかがでしょうか?ここで提案があります。これを機にティルキア国もそろそろ聖女に結界を張ってもらうことはやめませんか?教会は神の祈りを捧げる場所としてこれからは政治には一切かかわらないことにしてはいかがでしょう?」


 「だが、それでティルキアは大丈夫なのか?」


 そこに大声で意見を述べる男。グレンだった。


 「いいえ皆さん、結界などなくても我々はゴールドヘイムダルと国境警備隊で充分やって行けるかと思っています。これからはより一層他国とも協力関係を図りながらティルキアも変わる時ではないかと思っておます」


 「そうかもしれん。ゴールドヘイムダルの隊長が言うんだ。間違いはないだろう」


 「それに聖女ももういないんだろう?ガイル大司教どうなんです?」


 「それは…まあ、今の段階ではそうですが、ご心配には及びません。この国は神の国です。いずれまた力のある聖女となる女性が現れるはず…」


 「そんなあやふやな…」


 「あんたそれでも大司教なのか?そうだ。大司教も力をお持ちでしょう?あなたが決壊を張ってくれればいいんじゃ?」


 「いえ、私はもう年ですし…」


 レオンが言う。


 「皆さん。ガイル大司教もフィジェル宰相と一緒になってその権力を自分の利益の為に利用して来たのです。彼にはもう大司教はもうふさわしくないと思いませんか?」


 「何を!私はこれまで一生懸命…」ガイルはぎゅっと唇を噛みしめるとそれ以上は言えなくなる。


 「一生懸命自分の懐でも肥やして来たんですか?」


 「し、失礼だぞ。レオン隊長。そんな証拠でもあるのか?!」


 「ええ、フィジェル宰相がいくらでも証言してくれるでしょうね。その前に自ら身を引いた方がいいのではないですか?」


 「くっ!……」


 これまでと言うようにガイルは肩をがっくり落とす。


 ロがレナート元公爵がそこにいた議員に尋ねる。


 「皆さんガイル大司教は今日で解任と言うことでよろしいでしょうか?」


 「ああ、新たな教会には新しい司教がふさわしい。皆さんそうでしょう?」


 「「「そうだ。そうだ。ガイルに早めてもらうのがいい」」」


 ひとりがそう発言するとすべての議員の声が揃った。


 「では皆さん。ガイルは教会追放と言うことでいいですね」


 「そんな!私はどうすれば…」


 ガイルは頽れるようにその場に倒れ込んだ。


 「罪を問われないだけありがたいと思いなさい」


 「ぐふぅ…」ガイルの口から力ない息が零れた。それを近衛兵が両腕を抱えて連れて行った。


 「さて皆さん、ガイルは教会追放と言うことで。ですがいずれにしてもしばらく聖女不在ということで結界は無理でしょう。そうなると国境警備隊にしっかり警備をお願いするしか、それから国内の立て直しをして隣国との友好関係を修復しなければなりません。まずはアラーナ国。ここには元聖女アリシア様が王妃となられていますし、すぐにでも友好条約締結をしたいと考えております」


 「それにはまず宰相を決めなければ…皆さん、ロガレナート様がピッタリだと思いませんか?」


 ひとりの議員が言う。


 直ぐに決が採られて宰相はロがレナート元公爵に決まった。


 ガイルは教会を追い出されることになり、近衛兵に連れられて大聖堂に行く事になった。


 ガイルは私物を取りに行きたいと言ったからだ。


 ガイルは内心思う。”クッソ!これから私はどこに行けばいい。教会こそが私の居場所なのに…”


 どうすればいいかも決まらずガイルは大聖堂に向かっていた。


 


 


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