第22話 寝るときになってもめないでよ!
そろそろ寝ようということになって3人は驚く。
3人部屋を用意してもらったが、ベッドはダブルとシングルのサイズのふたつだった。
「当然私はこっちで寝るわよ」
アリシアはシングルベッドを指さす。
「ええ?おい、冗談も休み休み言えよ。俺とヴィルが一緒のベッドで寝れるわけないだろ!」
グレンがあからさまに文句を言う。
「俺だって、男と一緒に寝る趣味はないぞ。でも…いや、ここは俺とアリシアが一緒のベッドで寝て」
その瞬間ヴィルの頭にゲンコツが落ちる。
「いって!何すんです。ひどいじゃないですかグレン!」
このころにはすっかりグレンとヴィルは打ち解けてグレン殿下とは呼ばなくなった。
さすがにグレンを突き飛ばしたかったがそう言うわけにもいかず…
「なんだ?やるのか?」
「そっちこそ。いきなり殴っておいて。何なんです?」
ふたりの間に険悪な雰囲気が漂う。
「ちょ、やめてよ。ふたりとも…そうだ!いい考えがある。ベッドをくっつけてこうすれば広くなるじゃない。私が真ん中に寝てヴィルはこっち。グレンはあっち。これでいいんじゃない?」
「あのなアリシア…そういう問題か?男に挟まれて眠るなんてそもそも、うら若き乙女としてはしたないと思わないのか?」
ヴィルが呆れたように口を尖らす。
「じゃ、2人でベッドを使ってよ。私はひとりで寝るから…それにわたし、もう疲れてるのよ。先に寝るから…おやすみなさい」
「「アリシア!」」
グレンとヴィルが声を揃えて言った。
「もう、仲良くしてよね。おやすみ」
アリシアは相当疲れていたらしくそのまま寝てしまった。
グレンとヴィルは仕方なくベッドの端と端で寝る事にした。
「お前絶対にここから入ってくんなよ」
「グレンこそ、俺が寝たすきに襲ったりしないで下さいよ」
「っなことするか!」
***
そうやって無事3人は朝を迎えた。
早朝グレンは一番に目が覚めた。
それと言うのもベルジアンの気配を感じたからだ。
ベルジアンが魔法陣に入って来たことを感じ取ると転移魔法を使って部屋にベルジアンを転移させた。
「グレン殿下ごぶじですか?」
「ああ、ベルジアンは?」
「はい、あのここは?」
「ティルキア国の王都にある宿だ。それで弓矢は?」
「はい、持ってまいりました。それから御父上はやはり毒殺のようでした。国王からはアーモンド臭のような匂いがしていましたのでおそらく魔素を含んだ毒を盛られたのだと…残念です」
「そうか。ずっと寝込んでいたのも多分少しずつ毒を盛られていたのだろう。俺がもっと早くあの王妃を追い出していれば…」
「それは無理だったと思います。あの方は貴族の大半を味方につけておいでですしマティアス殿下を次の国王にと望む声も多くありましたから」
「ああ、アラーナ国の事は取りあえずこのままにしておく。今は先にやるべきことがある。魔王の魂を魔狼から取り戻すことが先決問題。もし魔族が混乱して森から出て暴れるようなことになればそれこそ人に被害が出ることになる」
「何があったのです?」
グレンは詳しい事をベルジアンに話した。
ベルジアンもグレンに賛成した。
「魔狼は今どこにいるんでしょう?」
「ああ、それが問題なんだ」
グレンも魔狼がどこにいるかは全くわからなかった。
***
魔狼はオルグの泉から飛び出すとすぐに太陽と月を探す事にした。
だが太陽は高い位置にあってとても届かないとすぐに気づいた。
それに魔狼には思考能力があってすぐに街中で目立ってはまずいと思い森に入って身を潜めた。
そして夕方になると腹が減って来た。
森で獣を殺してその魂で腹を膨らませると西に沈んでいく太陽を見てがっかりした。
その夜は月も細くとてもそんな月に興味が湧かなかったのでそのまま眠ることにした。
そして翌日東から太陽は登るのを見て思いついた。
そうだ。東を目指せばいいんだと。そして魔狼の兄弟は東に向かい始めた。
途中で獣や時には人間を殺して東を目指した。
だが、いくら高い山から飛び上がっても太陽に届かなかった。
兄のスコールは怒って今度は西を目指そうと言った。
だが弟のハーティは月がいなくなってすっかりやる気をなくしていた。
それに獣や人間の魂だけでは力もあまりつかなくて腹も減っていた。
ハーティはスコールに聞く。
「兄さん、もっと力の付く魂はないのかな?」
「そうだな…力の付く魂か…そうだ。この世界には魔獣がいるはずだ。その魂ならきっと力もつくはず。そうだ。魔獣のところに行こう」
そして魔狼2匹は魔獣の森に行って魔王の魂を奪って逃げた。
そこで2匹は喧嘩になった。
「これは俺の魂だ」
「違うよ。王の魂は俺のだ。いつも兄さんは俺のものを横取りするじゃないか。俺が先に言い出したんだからな」
「何を言うんだ。俺が魔獣の魂がいいと言ったんだ。いいから俺のものをよこせ!」
「いやだ!これは俺のだ」
そう言うが早いかハーティは魔王の魂を飲み込んだ。
「クッソォ!ハーティ出せよ。今すぐ吐き出せ。おい、ハーティ!」
「いやだ。兄さん追いつけるもんなら追いついてみろ」
魔王の魂で力の出たハーティは一気に空中をかけた。
スコールはいつもならハーティに負けることはなかったが何しろこの世界では思うように力が出ないのだ。
ここは魔界と違って魔忌の力がない。
何としても太陽を引きずりおろしてこの世界を暗黒の世界にしたいと思っているのにだ。
スコールは置いてきぼりを食らって仕方なくそのまま西を目指すことにした。
一方ハーティはみなぎる力で一気に元気を取り戻したが月はまだ思うように顔を出してくれずそれならと人間の街を探索することにした。
何しろ魔王は人にも姿を変えれるのだ。
そして今はティルキア国の王都べズバルドルにいた。
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