第17話 やっぱりグレンの無実をはらしたいって思うから
アリシアはしばらくグレンが走り去った方を見ていたがいつまでもそうしているわけにも行かないと屋敷に戻った。
もう…失敗したわ。グレンの言う通りに話を合わせておけば良かった。
でも、今さら遅い。仕方ないまだ朝も早いし、ヴィルを起着てくるまでに朝食の準備でもいてよっと。
もしかしたらお腹をすかせてグレンのも帰ってくるかもしれない。
ううん、きっとグレンの事だもの腹減った飯食わせろ!とか言って帰って来るに決まってる。
だってあの人図々しいもの。
アリシアはそう思うと何だか気分が落ち着いた。
しかし待てど暮らせどグレンは帰ってこなかった。
そうこうしているうちにヴィルが起きて来た。
ヴィルには、グレンが魔狼退治の話をしたら怒って出て行ったと説明した。
これからどうるするかを話し合ったがグレンが子犬になってここに来たことはどうしても話せなかった。
だったら最初から…ったく。
ヴィルは話を聞いてしばらく考えていたが…
「ベルジアンも帰ってこなかったし、やっぱり王宮で大変な事が起きてるに違いない。国王がなくなって跡目争いでも起きたら魔狼を退治して欲しいと頼んでも引き受けてくれるかわからないぞ。どうするアリシア?」
ヴィルの言う心配はかなり当たっていると思う。
「ええ、ベルジアン様も捕らえられたのかも、こうなったら王宮に戻ってグレンの無実を証明しなきゃ、そうすればきっと魔狼退治に協力してくれるんじゃない?」
アリシアはそう言っていいことを思いついたと思った。
グレンが王宮に帰って来た時無実がはっきりしていればきっと彼は私たちを助けてくれる。
そのためにはグレンが子犬になるって事はヴィルには絶対に秘密にしておこう。
***
朝食を取るとまた王宮に戻ることにした。
ふたりはお金も持っていなかったので仕方なく歩いて王宮を目指した。おかげで王宮に着くともう夕方になっていた。
でも、今日中についてよかったと思った。
王宮の周りは高い壁で囲まれていて入り口には門番がいた。
高い金色の門が常に閉じられているようで出入りには門番が門を開けて通る人をチェックしている。
「ヴィルこんなに厳重だなんて思わなかったわ。私たちこんな所通らなかったしね」
「ああ、でもアリシアが聖女でマティアス殿下の怪我を治したことくらい知れ渡ってるだろう?ティルキア国から来た聖女だと名乗れば大丈夫だろう」
「ええ、そうね。やって見る」
アリシアは門番に声を掛ける。
今は聖女服ではなくドレス姿でそれも一日中歩いていたせいでかなりくたびれたようにしわしわになってはいたが…
「ティルキア国から来ましたアリシアとヴィルフリートと言います。昨日は国王がお亡くなりになって私たちはいったん出直すつもりで王宮を後にしましたが今一度国王に最後のお別れを言いたくて参りました。どうか中に入れて頂けませんか?」
「ティルキア国から来た聖女か?」
「はい、そうです」
門番たちの顔色がさっと強張る。
「お前たちにh国王殺害に協力したという容疑が掛かっている。おい、こいつらを捕まえろ。王妃殿下の所に連れて行く」
門番がアリシアの腕をぐっと力強くつかむ。
アリシアは後ずさりその手を払う。
「待って下さい。それは誤解です。私は国王がなくなった晩はグレン殿下と一緒だったのです。だからそのこともお話するつもりでこちらに伺ったんです。私やグレン殿下は国王の部屋などに行ってはいません。どうか話を聞いて下さい」
「無理だ。グレン殿下は昨晩、牢から逃げたままだ。どうせ捕まるのが恐くなったんだろう。もしかしてお前、殿下に頼まれて疑いを晴らそうとしてるんじゃないのか?」
門番は仲間と共に腰の剣に手をかける。
「本当に違うんです。私もグレン殿下もそんな事はしていません。治癒魔法で国王の治療をした後は一切国王に近づいてなんかいません。どうか信じて下さい。それにお取次ぎをお願いします」
「取次など無用。さあ、連れて行け!」
ひとりの門番がそう言うとふたりの門番がアリシアの両腕を掴もうと近づいてきた。
アリシアの前にヴィルが出て話を始める。
「まあ落ち着いてくれ。本当に俺達は何もしてはいない。国王を手にかけるなどありえない。それにそんな事をして帰って来るとでも?なあ、話を聞いてくれないか?」
ヴィルは、まあまあと両手を掲げて門番に落ち着くよう話をする。
だが、無理だった。
門番は話など聞く気はないらしく腰に下げた剣を抜いた。
「言うことを行かないなら腕ずくで連れて行く。さあ、来い!」
門番が剣先をアリシアたちに向ける。
そうはさせるかと今度はヴィルが剣を抜く。
お互いの剣がかち合いぎりぎりと剣先が押し合う。
「ヴィル危ない。やめて。ああ…もう、ヴィル…」
アリシアはヴィルと門番のせめぎ合いに声を上げる。
だが、何と言っても門番は3人。最初は優勢に思えたヴィルだったが一人で太刀打ちできるはずがなく。
ヴィルが相手の剣を払った好きに別の門番がヴィルに切り込んだ。
「あぶない!!」
その瞬間アリシアは両手を突き出し満身の力を押し出した。
ヴィルが身体をよじる。アリシアの身体が傾いてヴィルを庇うようにふたりの周りに金色の帯が絡みつく。
その瞬間。ふたりの身体は一瞬でその場から消えた。
門番は切りつけた剣が空振りに終わりそのまま地面に剣が叩きつけられた。
「おい、ふたりはどこだ?まだ遠くに入ってないはずだ。探せ!」
門番は慌ててアリシアたちを探す。
だが、アリシアたちは見つかるはずがなかった。
アリシアたちが次に脚をつけたのはティルキア国のアステール山にある神殿の前だった。
「きゃー、ヴィル危ない!」
アリシアはぎゅっと閉じた瞼をそっと押し上げた。
「な、なに?ここってどこ?そうだ。ヴィル怪我は?」
「なんだ?いったい何が起きたんだ。アリシアお前こそ大丈夫か。いきなり俺を庇うなんて…お前こそ怪我は?」
「ううん、どこも痛くないわよ。それにここはどこ?私たちってさっきまで王宮の門の前にいたはずよね?」
「ああ、そうだ。でも、ここはさっきの場所じゃないぞ」
アリシアはやっとちゃんと立ち上がって辺りを見回す。
「あれ?ここって神殿よ。えっ?どうして私たちティルキアに帰って来てるの?」
「ここが神殿?俺神殿には来たことがないから…でもアリシアがそう言うならきっと神殿なんだろう。も、もしかしてアリシア転移魔法がつかえたんじゃないのか?」
「まさか…私つい最近まで加護魔法しか使った事がなかったのよ。大司教に治癒魔法を教えてもらって出来るようになったばかりで…転移魔法なんて無理に決まってるじゃない」
「そうだけど…でも、そうとしか考えれないだろう。あれだ。俺が危険だと思ってものすごいっ力が出たとか…ほら火事場のばか力って言うだろう?」
「失礼ね。私はそんなばか力なんかありませんから」
「でもそれ以外考えれないだろう?」
「まさか…」
ふたりがそんな事を言っていると誰かが走って来た。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます