世界でも指折りの元パラディンは、まあまあでそこそこな人生を歩みたい
きゅうかんばー
プロローグ
唐突だが、聖騎士の中には二種類の人間が存在する。一つ目は、作成された聖剣を行使するナイト。そして二つ目は、聖権を行使できるパラディンだ。
単刀直入に言ってしまえば、パラディンの方が偉い。遥かに偉い。小難しい説明を抜きにしても、その言葉が放つ仰々しさが物語っていると思う。しかし、ここはぐっとこらえて説明を聞いて欲しい。
聖剣とはそういう名前の物質、剣だ。
だが、聖権は違う。
意思を持った、あるいは感情を持った権能そのものなんだ。……権能は何かって?権能は、行使できる力のこと。
「平たく言えば、つまり。思ったことを行使できる力ってコトだな」
そうそう、そういう都合の良い力が、聖権って事。……ってオォイ!ここまで介入してくんなよ!いまモノローグの途中でしょうが!!!
「オマエ、話なげぇよ。いつまで続ける気だよ」
それはもちろん。聖騎士についての全てを叩き込んだ上で本題に入るつもりだが?
あ、やめて。
しゃらくさいからって、無理矢理終わらせにかからないで!
分かった!話す!話すから!所属してた聖騎士団から追い出された話するから!
あ、良かった。話の通じる
相手でよかっ……
通じねぇ!話なんか通じてねぇ!
「エイゼル・アルスタイン。かっこ33歳かっことじ」
え、急に何?
「自己紹介」
え?
「自・己・紹・介」
……えー、わたくしはエイゼル・アルスタイン(33)
「南の主要都市セインブルクにある聖騎士団に勤めていた、元聖騎士長」
みなみのしゅようとしセインブルクにつとめていた、もとせいきしちょう。
「……もういい、ワタシがやる」
セインブルクに居た頃は、パラディンとして活躍し、聖騎士長にまで上り詰めた逸材。だがしかし、全国の聖騎士団の元締めである教会、その枢機卿の一人によく思われず、罠にはめられ、聖騎士長の任を解かれる。
そして、団員による投票によって、パラディンの証である聖権を没収され、なおかつ聖騎士もクビにされ、現在は路頭に迷う浮浪者。
そんなエイゼルは現実逃避も兼ね、友人たちが居る中央都市を目指し絶賛移動中。
である。
そういうことで、兎にも角にも、わたくしエイゼル・アルスタイン(33)は協力関係にあった教会に聖騎士団を乗っ取られっ、今に至るわけであります!
「回想、終わりっ!」
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