第23話 天使と悪魔、退散する

和子「あ、お母さん。外した戸がひとりでに閉まってく」

為子「いいのよ。黒子さんが閉めてるんだから。放っときなさいよ」


黒子ずっこける。為子に両手でファイティングポーズを取りながら上手に消える。風呂の戸が開いて服を纏った天使と悪魔が出てくる。


悪魔「あー、さっぱりした」

天使「まんず、ありがとうございましたただ。あとは為子さん、良夫さんばよろしくお願いしますだ。(悪魔を指差して)このやろの毒に当たって虚脱状態になってますけん……あ、と云ってもおらたちの言葉は通じないんだっちゃ。ほったらばおらもひとつ天力(てんりき)をかますだよ。天力、甲斐甲斐しさ。臨(左右の手をうち1組で人差し指を立て合わせる、忍者の手印)!」


為子、急にそわそわした様子になる。


為子「あら?それにしてもお父さん、ちょっと長湯だわね。まさか茹蛸になってんじゃないでしょうね。いくら頭ハゲてるからって云ってさ……」

和子「ねえ。普段風呂の中で歌なんか歌わないのに。それにシャンシャンとかチョイナチョイナとか、一人三役みたいに合いの手まで入れてたわ」

為子「それは私たちも入れてたじゃないのさ(和子ずっこける)。うーん、とにかくちょっと覗いて来ようかね」

天使「ほら、悪魔。為子さんこっち来るだ。早うお暇せにゃ」

悪魔「お、おう。じゃ行こ。(玄関に行こうとする天使に)ばかやろ、こっちだ。こっから飛び降りりゃいいんだ」

天使「あ、そうだったちゃ。ほな……」


天使と悪魔、自宅セットから一緒にツラに、舞台端(ぶたいばた)に飛び降りて和子宅をふり返り見る。


為子「ちょっと、あんた。いつまで入ってんの?だいじょうぶ?開けるわよ」

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