あるお嬢様と執事の話。season2

天千鳥ふう

#1 あるお嬢様と(元)執事、新学期を迎える。

 薄雲の浮かぶ空の下、肌寒い空気が張り詰めている。


「うー、寒い。新学期も頑張ろうと思えないほど寒いわね」


ベッドから身を起しかけたお嬢様は、あまりの寒さに掛け布団を手繰り寄せた。

一年はあっという間。お嬢様は、お嬢様学校における新学期を迎えたのだった。


——こつんこつん


「はぁい。…って、なんかノック音おかしかったような」

「絢音さん、朝食の用意ができたそうですよ」

「・・・・」


ドアの向こうから聞こえてきた声で、お嬢様はすべてを思い出した。


「あの、すごーくもーしわけないんだけどね」

「はい」

「下の名前さん付け呼びと若干雑になった敬語がなんとも気持ち悪いのね」

「では以前と同じくお嬢様とお呼びした方がよろしゅうございますか」

「・・・・(困ったわね。これだと前までの言動を思い出しちゃって最&悪だわ)」

「ええと、絢音お嬢様さん?」

「・・・・ふへっ(誰のことかしらw)」

「ふ、ふへっ⁉」

「何でもないわよ。私の呼び名はもうどうでもいいわ。着替えてすぐ行く」

「はい、お待ちしておりますです」

「・・・・かはっ(敬語崩壊させないでくださるかしら⁉)」

「お嬢様、主治医をお呼びいたしましょうか」

「吐血なんてしてないから大丈夫よ。わかったから下がっていいわ」

「それはよかった。では失礼します」


足音が遠ざかっていくのを2秒間ほど聞いてから、掛け布団をかぶってどこかおかしかった(元)執事を思い出して笑い——












——二度寝した。















そのあともう一度天羽がお嬢様の部屋にやってきて、超近距離でお嬢様を起こしたことにより彼の片眼鏡が吹っ飛びお嬢様の部屋のドアにめり込んで、それに驚く暇もなく緑埜が交通法をはるかに違反した速度でお嬢様を学校まで送り届けたことは、言うまでもないことだろう。

☞the end.

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