メンヘラと生活について

 その日その日を引きずられて暮しているだけであった。下宿屋で、たった独りして酒を飲み、独りで酔い、そうしてこそこそ蒲団ふとんを延べて寝る夜はことにつらかった。夢をさえ見なかった。疲れ切っていた。何をするにも物憂かった。

――太宰治「葉」より


Syrup16g「デイパス」より

「デイパス」はデパスの事と教へしは君にあらずやpinkぴんくの剃刀


Syrup16g「無効の日」より

「無効の日」聴きをり病院待合はしんとしてゐる人の気配せり


馬手めてに持つグラジオラスは棒状で狼藉者のモリッシー歌へり


精神メンタル健康ヘルス大好きラーだと自称せる人に健康好きはあらざりしひょう


ブラックニッカクリアはnectarねくたる水割りをがぶがぶと飲みがぶがぶと飲み


バタイユとかフーコーとかのことを言ひ午前二時までに錠剤を噛む


えふ」よりも「phぴーえいち」でフィを表したいくらいの贅沢ちょっと過剰な


あたくしはおまへと違ってマイブラ嫌ひ アリプロ嫌ひ ついでに大森靖子も嫌ひ


掻きむしり痛みとの時差はかる時私の肌で雪は病斑びやうはん


機械式顔に痛点なかりしよ自傷に淫せる彼の正しさ


叙情なる綺語を棄てつる詩人らに残れる憤怒紙下半白かみかはんしろ


「覚醒剤とShoegazerしゅーげいざー」てふ題名を数年すねん暖め腐りたる繭


堕落せる天使のはねに斯く書けり「我ら抽象の高みより堕つ」


幾度いくたびの死を死につるや ぬばたまの我がたましひは黒猫に似て


おまけ

新しき斧とガスマスク持て行かむ薔薇をるため麻痺せぬうちに

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