第8話 執拗な暴行の末に

「このボケが!おら!おらあ!!」「オラ!テレビ見えんやろが!」「へぼい年上やな!」


小林、小森、高澤に顔面を代わる代わる殴られ続けた岡田は「すいません!すいません!もうやめてください!」と泣きを入れたがもう遅い。

小林も小森もいったん始めたら残酷さを競い合うかのように相手を痛めつけるのだ。

拳だけではなくウイスキーやビール瓶で頭を殴られ、箒の柄で体中を殴られ突かれる。

女の町田も調子に乗って加わり、「とろいおっさんやな!」とか笑いながら箒の柄で岡田の頭に面をくらわす。


その頃、騒ぎをよそに女好きの芳我は離れの別室で藤川に言い寄っていたが、兄貴分の小森に「お前もいちゃついとらんとやらんかい」と大声で呼ばれたためにリンチに加わる。

もちろん嫌々ではない、藤川の前でいい格好をするチャンスだ。

「オラ!ボケえ!!」とか言って威勢よくビール瓶で岡田をどつき回す。

こいつは危ないこととかっこいいことは同義語だと思っているバカで、こういう女がいる前では張り切って人を痛めつけるのである。


今度は誰も止めようとはしない。

止められる雰囲気じゃないし、悪いのは岡田だと割り切って傍観しているか参加しているかのどちらかだ。


21時20分ごろ、誰かが注文したピザが配達されて一同それを食べ始めたのだが、その間も思いついたようにうめく岡田に暴行をする。

小林は食べるのに使っていたフォークを岡田の頭にグサッグサッと刺し流血したところにウイスキーやしょうゆをかけた。

「うう~勘弁してください~」と凄まじい暴行ですっかり心折られて無抵抗の岡田はさっきから懇願し続けていたが、許す気はない。


22時30分ごろ、林が「そろそろオヤジが帰ってくるんやけど」と言い出したために場所を変えることにした。


「おら!立てて!これで終わりちゃうぞ!」


血だらけの岡田は鬼の小林に立たされ歩かせされた時にいったん逃げ出そうとしたが、すでに全身を滅多打ちにされていたダメージからすぐに捕まり、おかげでさらに残虐なリンチを受けることになる。


「緑地公園なら人おらんて」


23時ごろ、小林、小森、芳我ら七人は林の家から7㎞離れた「愛知県木曽川祖父江緑地公園」へ移動。

移動は重住の運転する車で二便に分かれてのものだった。


そして同公園でリンチの再開となる。

このリンチでは道中で拾ったカーボンのパイプが使われ、小林、小森、芳我、高澤、町田は岡田の頭、腹、大腿部、背中を滅多打ち。


「ごぼっ…!げっ!がはぁ!もう…やめ…ごめんなさ…びぃ!」ちょっとたてついただけなのに、血まみれになった頭を何度も連打。

途中、公園内に車が入ってきたために追っ払ったが、警察に通報される恐れから再び移動を開始。

近くの「尾西文化広場」の駐車場まで行き、そこでまたもリンチを始めたが、この時点で七時間以上暴行されている岡田の命は危険な状態にあった。

それなのに小林は「死ね!オラ!!とっとと死ね!」と岡田をパイプで殴り続け、堤防から蹴落としたりもする。

この時、いつまでも続くリンチで岡田が危険な状態になっていることを知った町田が「もうあかんて!ホント死んでまうが!」と制止したが、小林は止まらない。

高澤はシンナーの入った袋を岡田の体の近くに置いて火を点け、体にも引火したがもうすでに弱い反応しかなかった。


「こりゃあ死ぬな」「またやってまったな」「どないしよ」

ついこないだ人を殺したばかりの三人は特に慌てるまでもなく「川に流せばええが」と冷静だった。


高澤も加えた四人で川まで運ぼうと堤防から蹴り落とし、手足を持って引きずったり、身体を蹴り転がしたりして河川敷の雑木林内まで動かなくなった岡田の体を移動させたが、林に阻まれて川まで移動できない。


「もうこの辺でええやろ」


結局雑木林内に放置、もう危篤の状態にあった岡田は動くことはなくうめいていたらしいがそのまま死亡した。


岡田の死体はそれから6日後の10月13日に発見されたが、腐敗して蛆が湧き、頭部から体幹にかけての軟部組織をほとんどを食い尽くされてほとんど白骨化した状態であったために死因は特定できなかったという。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る